2016年3月20日、MotoGP2016年シーズンが開幕した。開幕戦の舞台となったのは連年通りカタール、ロサイル・インターナショナル・サーキット。全長は5,380m、1,068mという長いメインストレートが特徴の中高速レイアウトで、周囲を砂漠に囲まれているため、砂や風などの影響を受けやすく、マシンやタイヤの耐久性と共に、ライダーの高度なマシン制御が求められる。2008年以降、決勝はナイトレースで行われる。
今シーズンMotoGPでは、レギュレーションの大幅変更が行われた。タイヤサプライヤーはブリヂストンが退きミシュランのワンメイクに、さらにECUのソフトウェアが全車共通となった。こうした大幅なレギュレーションの変更により、今シーズンは昨シーズンまでの勢力図が大きく変わる可能性もあるため、開幕戦は今後の展開を占う上で非常に重要なレースとなる。
迎えた決勝は晴天、気温21℃、路面温度23℃のドライコンディションでスタートした。抜群のスタートを切りホールショットを決めたのはポールポジションスタートのホルヘ・ロレンソ(モビスターヤマハMotoGP)。4番グリッドのアンドレア・イアンノーネが2番手、5番グリッドのアンドレア・ドビツィオーゾが3番手に躍り出、ドゥカティ勢がスタートで順位を上げた。4番手にバレンティーノ・ロッシ(モビスターヤマハMotoGP)、5番手にマルク・マルケス(レプソルホンダ)と続き、この5台がトップ集団を形成した。
なお、予選で好タイムを出しフロントロー3番グリッドを獲得したマーベリック・ビニャーレス(チームスズキエクスター)は、スタートで7番手まで順位を落とした。
レース序盤2周目には、ストレートスピードに勝るドゥカティのA・イアンノーネ、A・ドビツィオーゾが先頭を行くJ・ロレンソを交わしてワンツー体勢を築き、J・ロレンソは3番手に後退。3周目には5番手のM・マルケスがV・ロッシをかわして4番手に浮上した。
ドゥカティ勢がレースを引っ張る展開となったが、この状況が大きく変わったのが6周目。先頭のA・イアンノーネにチームメイトのA・ドビツィオーゾが肉薄。接触ギリギリのチームメイトバトルが繰り広げられ、A・ドビツィオーゾが先頭に立った直後、A・イアンノーネがまさかの転倒。レースを終えてしまったのだ。
レース中盤、9周目には2番手のJ・ロレンソがA・ドビツィオーゾを抜いて再びトップに立ち、安定した走りでアドバンテージを築いた。
その後激化したのが2番手争いだった。A・ドビツィオーゾ、M・マルケス、V・ロッシはレース中盤以降、接近戦を繰り広げた。19周目にはM・マルケスがA・ドビツィオーゾを交わして2番手に浮上したものの、その後も接近戦は続き、最終ラップA・ドビツィオーゾはM・マルケスを交わして再び2番手に浮上した。
開幕戦を制したのは中盤以降非常に安定した走りを見せたJ・ロレンソ。2位はA・ドビツィオーゾ、3位M・マルケス、4位V・ロッシ、5位ダニ・ペドロサ(レプソルホンダ)、6位M・ビニャーレス。なお、カル・クラッチロー(LCRホンダ)、ロリス・バズ(アビンティア・レーシング)、ステファン・ブラドル(アプリリアレーシング)は転倒リタイアを喫している。
レギュレーションの大幅な変更が注目された今シーズンの開幕戦だったが、昨年王者のJ・ロレンソはただ優勝するだけではなく、21周目にロサイル・インターナショナル・サーキットのコースレコードを8年ぶりに塗り替えその速さを証明した。
いよいよ開幕したMotoGP2016年シーズン。昨年王者J・ロレンソの速さは健在だが、まだまだ先は読めない。ドゥカティ勢はストレートでの圧倒的な強さを見せつけたし、新レギュレーションへの対応に苦戦していると言われていたホンダ勢だったが、M・マルケスも調子を上げてきている。V・ロッシも表彰台は逃したものの、3位のM・マルケスとの差は僅差である。さらに、決勝では順位を落としたものの、予選ではスズキのM・ビニャーレスが速さを見せており、今後の活躍も大いに期待できる。
2016年シーズンは始まったばかり。昨年同様ヤマハがその強さを見せるか、ホンダ・ドゥカティの逆襲はあるのか、はたまたスズキやアプリリアといった伏兵が台風の目となるか――いずれにしてもレギュレーションの大幅変更にいち早く適応した者、あるいはチームが大きなアドバンテージを得ると見て間違いないだろう。
第2戦アルゼンチンGPは4月3日。一体どんなレースになるのか、まだまだ各チームの戦況が読めないだけに、楽しみは募るばかりである。(編集担当:熊谷けい)