思春期・若年成人のB細胞性急性リンパ性白血病の原因発見―東大

2016年03月30日 08:12

 AYA世代(Adolescent and Young Adult, 思春期から若年成人)のがんにはまだ不明な点が多いが、その中でも頻度の高いB細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)について、東京大学の研究グループが原因となるがん遺伝子を解明した。

 AYA世代のがんはこれまであまり解析がなされてこなかったこともあり、多くの種類のがんで発症機構が不明であり、治療法も小児がん治療に準ずるべきなのか、成人がん治療に準ずるべきなのか定まっていないことが多い。東大の研究グループは、AYA世代のB-ALL白血病細胞を次世代シーケンサーにより網羅的に解析することで、B-ALLの約65%の症例が何らかの融合型がん遺伝子を持つことを発見した。そのうち最も多い約16%で見られたのは全く新しいがん遺伝子のDUX4-IGH融合遺伝子というもので、2番目に多かったのがZNF384融合遺伝子、3番目かったのが新規MEF2D融合遺伝子だった。

 DUX4はこれまで発がんとの関わりは知られていなかった遺伝子だが、AYA世代B-ALLにおいては、DUX4遺伝子の後ろ側が削れた上で、免疫グロブリン遺伝子H鎖(以下、IGH)座に挿入されて融合し、大量のDUX4-IGHの融合タンパクが産生されることを新たに明らかにした。この融合タンパクは強力な発がん能力を持っており、DUX4-IGH融合タンパクをネズミのB細胞で産生させるとネズミは白血病を発症し、またDUX4-IGHのあるB-ALL細胞株でDUX4-IGHの発現を低下させるとがん細胞の死が誘導されることも確認された。

 さらにDUX4-IGHあるいはZNF384融合型がん遺伝子を有する白血病は予後が良好な群に属し、MEF2D融合型がん遺伝子陽性の白血病は予後の不良な群に属することも明らかにした。

 研究グループでは、「これまで発症原因が不明であったAYA世代白血病の多くの症例における原因を解明しただけでなく、治療法や予後予測マーカーの提案へとつながる新たながん遺伝子を発見した画期的な成果といえる。この発見はAYA世代B-ALLに対する新しい分子標的治療法開発や、予後予測診断法の速やかな実用化につながることが期待される」とコメントしている。(編集担当:城西泰)