矢野経済研究所では、アウトソーシング世界市場の調査を実施した。調査期間は2015年12月~2016年2月、調査対象はグローバルアウトソーシング事業者(SIer、システム運用保守事業者、データセンター事業者、BPO事業者等)。調査方法は同社専門研究員による直接面談、電話・E メールによる取材、ならびに文献調査を併用した。
グローバルアウトソーシング市場とは、「システム開発・統合サービス」、「システム運用管理・データセンターサービス」、「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービス」の 3 つのアウトソーシングサービスを対象としており、世界のアウトソーシング事業者の売上高ベースで市場規模を算出した。
それによると、為替変動によるリスク回避や、ビジネスのグローバル化に伴い、企業の海外展開や M&A で海外企業をグループ化する動きが急速に拡大しており、企業活動におけるグローバル化が加速しているという。これにより、経営の効率化やグローバルでのガバナンス強化等の観点から情報システムを開発・統 合する動きが進んでいるとしている。また、企業間の取引がグローバル化しているが、その際の取引の条件として BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)/DR(disaster recovery:災害復旧)の整備が必須となるため、世界各国においてシステム運用管理サービスやデータセンターサービスへの需要が高まっている。
2014年度のグローバルアウトソーシング市場規模(事業者売上高ベース)を 9,634億1,500万米ドルと推計した。2014年度から 2019年度までの同市場は年平均成長率(CAGR)5.1%で推移し、2019年度には1兆2,383億4,400万米ドルに達すると予測している。
一方、日本国内向けオフショアサービス市場は、グローバルアウトソーシング市場の内数として、日本国内向けに提供された、オフショア(海外)拠点での「システム開発・統合サービス」と「BPO サービス」を対象とした。2014年度の日本国内向けオフショアサービス市場規模(事業者コストベース)を 14億900万米ドルと推計した。日本国内のアウトソーシング事業者やユーザ企業においても、オフショア(海外)拠点におけるシステム開発・統合サービスや BPO サービスの利用が拡大している。オフショアでのカントリーリスクや人件費高騰などから一部のアウトソーシング事業者では、リショアリング(再び拠点を日本に戻すこと)の動きが見られるものの、多くのアウトソーシング事業者やユーザ企業が海外人材を活用した人件費の抑制に努めている状況に変わりはないとしている。
日本国内向けオフショアサービス市場を地域別に見ると、オフショア拠点として中国の占める構成比が75%程度と高いという。カントリーリスクの影響からオフショア拠点を中国から他の国に移管することを検討しているアウトソーシング事業者は多いが、日本語が出来る人材を中国よりも豊富に抱えている国は他にないため、今後も中国は国内向けのオフショアサービス拠点として一定のコスト規模を保っていくと予測している。
2014年度から2019年度までの日本国内向けオフショアサービス市場規模(事業者コストベース)は、年平均成長率(CAGR)3.6%で推移し、2019年度に16億7,800万米ドルになると予測している。(編集担当:慶尾六郎)