2009年から14年度の5年に、小中学校の教科書会社22社のうち10社が教科書検定中に教員らに教科書を見せ、現金などを渡していたことで教科書採択に不公正がなかったのか、徹底した調査を行い、事実関係を明らかにして頂くことを期待する。
教科書会社が検定中の教科書を教員らに見せ、謝礼を渡していた問題。公正取引委員会が独占禁止法違反(不公正な取引方法)容疑で調査に乗り出す。違反容疑が掛けられる事態が生じたこと自体、教育界にとって大問題だが、2009年から14年度の5年に、小中学校の教科書会社22社のうち10社が教科書検定中に教員らに教科書を見せ、現金などを渡していたことで教科書採択に不公正がなかったのか、徹底した調査を行い、事実関係を明らかにして頂くことを期待する。
馳浩文部科学大臣は12日の記者会見で、公取から排除措置命令が出た場合「教科書発行取り消しも含め、当然、検討する」と断言した。
公取調査にも「真摯に必要な協力は惜しまずにしていきたい。出来る限りの協力をしたい」と文科省として協力するとともに、結果には厳正な対応をとる姿勢を明確にした。
また、馳大臣は、今後、不正が発覚した場合、4年間の使用期間中であっても採択やり直しが図れるようにするなど再発防止策の強化姿勢を示している。こどもたちが学ぶ基本となる「教科書」だけに国民の納得できる対応をお願いしたい。
文科省は3月31日に小中学校で使用する教科書の選定への影響について調査した結果を発表したが、検定中の教科書を見せられた教員や教育委員ら4525人のうち1009人は教育委員会に教科書の選定を助言する調査員などになっていた。文科省はここについて調査の結果、採択に影響はなかったとしている。
そのうえで、都道府県の教育委員会教育長に対し「教科書採択における公正確保について、徹底を図るよう」通知を同日に発出した。
通知では「平成28年度以降における教科書採択に当たっては、いかなる疑惑の目も向けられることのないよう公正性・透明性の確保を徹底することが必要」と強調。具体的に「教科書図書選定審議会委員や調査員等の選任及びこれらの者の具体の審議や調査研究に当たっては、著作編修関係者名簿を確認し、各教育委員会内の関係部署とも連携し、教科書発行者との関係について聴取又は自己申告を求めるなどした上で、特定の教科書発行者と関係を有する者が教科書採択に関与することのないよう留意すること」などのほか、教科書見本の取り扱い、過当な宣伝行為などへの対処、検定申請本の取り扱い、教科書発行者との関係などについて指示。「教員等が法令等に違反して教科書発行者による不適切な行為に関与又は荷担した場合には懲戒処分も含め厳正に対処すること」を通知した。
馳文科大臣の歯切れ良い発言に実効を期待したいが、合わせて、教育委員会関係者や教員らが教科書採択前に教科書発行者(会社)と接触することや意見交換することも採択の公正性徹底の観点から禁止すべき。今回の問題を再点検し、より公正性と透明性が高まるよう継続して改善を図るよう願う。(編集担当:森高龍二)