遺伝情報の解読は「教育」にどのような影響をもたらすのか

2016年05月23日 08:43

 近年、遺伝情報が解読され、人間個々人に存在する言動の癖や嗜好、能力などの違いなどに関し、遺伝子が密接に関連しているということが明らかになりつつある。

 現在でもスポーツ選手やアーティストなどにおいて、子供がその親と同じ分野にて注目を集めるというケースは少なくない。ただし、もちろんこのような傾向には、幼少期からの生育環境などの後天的側面による影響も存在するであろう。

 しかしその一方で、さまざまな研究の成果により、ある特定の分野においては遺伝因子による影響が環境因子によるそれを凌駕するというのもまた確実であるということが知られるようになってきている。

 例えば陸上競技においては、南半球の人々が持つ筋肉繊維の瞬発性を高める遺伝子がより有利に作用をしているということが知られている。一方で日本人を含む北半球の人々においては筋肉繊維の持久性を高める遺伝子が作用をし、その結果として水泳競技などではそれがより有利に作用している。また北半球の人々のうちでも日本人など比較的脚よりも胴が長い民族の人々においては、この遺伝的特性がさらに水泳への適応性を高めている。

 ここまでは人種や民族のレベルでの遺伝的差異に関する話であったが、より小さな次元での人間個々人での遺伝的差異もまた、さまざまな分野の適性に大きな違いを与えている。慶応義塾大学の安藤寿康教授などの研究によると音楽における絶対音感やリズム感、記憶力や外国語への適応性などにおいておよそ50%程度の割合で遺伝的影響を伺うことができるとされている。

 そしてこのような遺伝的特性に関しては、アメリカなどにおいては既に教育分野における活用が始まっている。特にスポーツの分野において、個人の遺伝的特性に応じたトレーニングメニューを組むということが一般的になりつつあるのだ。これから先、遺伝的特性の教育への応用は、スポーツ以外の分野においても幅広く見られるようになるのかもしれない。(編集担当:久保田雄城)