安倍晋三総理と公明党・山口那津男代表の今月24日の会談後、山口代表が「総理は解散の『か』の字も考えていないということであります」と語ったことから、ダブル選挙の可能性は低くなったとみる向きはある。しかし、解散に限っては政治の世界で『ウソ』が許されることから、可能性が消えたとはいいがたい。これも与野党間の駆け引きの問題だ。
安倍・山口両代表による会談翌日の夜、片山さつき自民党総務副会長はツイッターで「今日(25日)昼の某大臣室では(衆院解散は)消えていない説」と書き込んだ。この方が理解できる。
理由は3つ。今年1月、安倍総理は総理在任中に憲法改正を行いたい意向を示した。自民党総裁の任期は2018年9月まで。自民党党則80条の4で総裁は2期を超えて在任することはできない。総裁公選規程第10条4では総裁を2期連続つとめた場合、これに引き続く総裁選挙の候補者になることは出来ないことになっている。
このため、参院で憲法改正発議(議員の3分2の賛成)に必要な勢力確保へ、自民党の議席を増やすために安倍総理が総理(総裁)として参院選挙に係れるのは今回のみ。憲法改正を至上命題にしているとすれば、単独選挙より、自民党にとって有利になるダブル選挙を行う可能性は高い。
また、参院選挙の32ある1人区全てで、野党4党は統一候補を擁立することになる。衆院議員と違い、地元での選挙基盤が弱い参院議員にとって、不利な形成を変えるにはダブル選挙にするほかに有効な手立てがない。
3点目、G7サミットでの外交成果と米国のオバマ大統領の広島訪問の実現、9月初旬の北方領土問題を含めたロシア・プーチン大統領との会談、昨年12月の慰安婦問題解決への日韓外相会談での最終合意の日韓首脳の確認など、経済政策以外でも安倍総理の実績として有権者に訴求できる材料が豊富だ。ダブル選挙の好機と受け取れる。
もともとさきの衆院選挙では自民が議席をとりすぎ、現在291議席あるので、解散すれば議席を減らすことにはなりそうだが、どこまで野党が議席を伸ばせるのかは未知数。仮に自民が議席を減らしても過半数を確保できていれば、憲法審査会での審議を進め、1年半後の17年12月に解散総選挙で、巻き返しを狙える。そう考えれば、ダブル選挙に打って出る可能性はやはり高いとみるのが自然ではないか。今月30日から6月1日まで、安倍総理の判断が注視される。(編集担当:森高龍二)