住友理工、中期経営計画「2020V」発表。2029年、創立100年に売上1兆円を目指す

2016年05月28日 20:53

Sumitomo

住友理工は、本年から2020年度までの中期経営計画「2020年 住友理工グループVision」を策定し、取締役会長兼CEOの西村義明氏(写真)らが出席した会見で発表した

 住友理工株式会社は、本年から2020年度までの中期経営計画「2020年 住友理工グループVision(2020V)」を策定し過日、取締役会長兼CEOの西村義明氏らが出席した会見で発表した。

 住友理工は、1929年(昭和4年)に三重県四日市市で、ゴムベルトの製造企業の昭和興業として設立、スタートした。以降、商号を幾度か変更しながら工業用ゴム製品製造で業態を拡大してきた。現在、おもに高機能ゴム製品を製造し、自動車用防振ゴムで世界トップシェア、ホース部門で国内トップシェアを誇る。

 2011年に発表した中期経営計画「2015年 住友理工グループVision(2015V)」で、M&A実施によるグローバル供給体制の確立、商号変更、グローバル本社の設置など、「変革と成長」に向けての事業戦略を進め、2014年に東海ゴム工業から現在の「住友理工」に商号を改めた。

 2015年度、同社の売上高は4200億円の目標を超える4245億円に達した。が、新製品開発コストの増大、M&Aで買収した対象企業の収益悪化、新規顧客開拓の遅れにより利益目標(340億円)は未達となり、営業利益145億円は目標の半分以下という結果だった。会見でCEOの西村氏は「今後、収益力向上が大きな課題である」と述べている。

 同社は、2029年の創立100周年に、連結売上1兆円の目標を掲げる。その基礎となる計画が、今回発表した2016年度から始まる2020年度までの「2020V」だ。この5年間を“創立100周年に向けた仕込みの期間”と位置付け、テイクオフに向けた助走として中期計画のテーマを「着実な成長」「体質強化」に設定した。また、「2015V」で残された前項の課題と外部環境変化を踏まえ、「環境技術強化」「モノづくり革新」「新規顧客開拓」の3点を 2020Vの経営戦略とした。

 経営計画の柱となる「環境技術強化」において同社は、「多くの国・地域において温暖化防止が叫ばれるなか、地球環境の保全は各国政府の施策にとどまらない。企業の責任で、当社もこれらに積極的に取り組む」とする。具体的には、すでにトヨタ製燃料電池車「MIRAI」に採用されている燃料電池車向けセル用ガスケットのような環境配慮型製品の開発を進める。このなかには住友理工独自の窓用高透明遮熱・断熱フィルム、安全運転支援を睨んだドライバー・モニタリング・システムなどの開発し、米ZEV(Zero Emission Vehicle)規制などに対応できる環境規制対応技術・燃料蒸散規制対応技術開発や徹底した製品軽量化への取り組みなども含まれる。もちろん、事業活動・製造工程における CO2排出量の削減・水資源保全・環境負荷物質の使用量低減なども大きな目標となる。

 もう一方の課題「モノづくり革新」は、創業以来のモノづくり企業として、「2020V」においてさらなる革新を進める。なかでも技術の進歩が著しいIoTや情報処理技術などを積極的に利用する。グループ一丸で投資・仕掛・リードタイムを半分以下とし、生産性を2倍に上げるという。この活動は、製造部門だけでなくスタッフ部門も含めたグループ全体で実施する。

 また、既存事業も、23カ国105拠点のグローバルネットワークや、新たに設立する「自動車新商品開発研究所(仮称)」を活用し、世界市場を見据えた製品開発を進める。自動車以外の事業についても海外展開を積極的に進め、新規顧客開拓を積極化する。

 同社は、「2015V」で積極化したM&Aによるグローバル拡大戦略で、一応の結果が出せたとして、今後5年での大きな買収などは計画していない。今回発表した、この中期計画「2020年 住友理工グループVision」で、「着実な成長」と「体質強化」を図り、2020年度の売上を5300億円(年率換算成長率6.6%)とし、営業利益320億円を目指す。同社では売上高のうち4300億円程度は自動車関連が占めると見ている。(編集担当:吉田恒)