楽器小売事業者は少子化影響でソフト戦略重視へ 6割超が「音楽教室」併設

2016年06月04日 19:01

 6月6日は1970年に全国楽器協会によって制定された「楽器の日」。古くから言われている「芸事の稽古はじめは、6歳の6月6日にする」との習わしに由来しているという。しかし、1970年に193万人だった出生数は、2014年には 100万人にまで減少。少子化による業界への影響が懸念されるなか、本業である楽器小売事業とともに子供や高齢者を対象とした習い事やイベントを連動させた展開が不可欠となっている。

 そこで、帝国データバンクは、判明している直近決算(2015年度または2014 年度)の売上高が5億円以上の楽器小売事業者52社をピックアップし、2013年度、2014年度、2015年度の年売上高、利益(当期純利益)のほか、所在地、業歴などについて分析した。

 今回の調査対象となった事業者52社の売上規模の分布をみると、「5億円~10億円未満」が31社で最も多く、以下、「10億円~50億円未満」(13社)、「50億円~100億円未満」「100億円以上」(各4社)と続いた。本社の所在地別にみると、「東京都」(14社)が最も多く、以下、「大阪府」(8社)、「愛知県」(5社)、「神奈川県」(3社)と続いた。

 年売上高が「100億円以上」の4社の所在地の内訳は、東京都(3社)、千葉県(1社)。「50億円~100億円未満」の4社の内訳は、東京都(3社)、大阪府(1社)となっており、年売上高50億円以上の8社のうち6社の本店所在地が「東京都」となっている。

 52社の創業(または設立)時期をみると、「1970年代」が13社で最も多く、以下、「1950年代」「1980年代」「1990年代」(各6社)、「1930年代」「1960年代」(各5社)と続き、「1800年代(1800年~1899年)」も4社存在している。高度経済成長期で東京オリンピックも開催された 1960年代までに創業・設立された事業者が52社中26社(構成比50%)と半数を占めている。

 52社の2013年度決算の年売上高の合計額は1632億1800万円、2014年度の合計額は1627億8800万円と推移し、2.6%(4億3000万円)減少。2014年度の年売上高が2013年度比で増加したのは33社(構成比63.5%)、減少したのは 19社(同36.5%)となった。

 今回の調査では、老舗企業が大半を占め、少子化のなかでも売り上げ、利益ともに安定している楽器小売事業者が目立つ結果となったが、調査対象となった 52 社中34社(構成比65.4%)において、ピアノ、エレクトーンを主体とする楽器販売とともに音楽教室経営が行われており、生徒を顧客、顧客を生徒とするために事業を連動させることが楽器の売り上げを維持するために不可欠な要素となっている。

 また、ギター、ドラムなどの軽音楽楽器や弦楽器の販売を主体とする事業者においても音楽教室や演奏会、イベント等を定期的に開催する事業者が目立っており、顧客・生徒の数を増やし、その関係を長く維持していくためのサービスをいかに展開していくかが、安定経営のためのカギと言えるとしている。

 総務省のデータによると、ピアノ、バイオリン、エレクトーン、ギターなどの「音楽教授業」を行う事業所数は全国に約 2 万カ所(2014 年時点)存在。少子化が進む一方、子供の教育に力を入れる家庭が増加している背景もあってか、近年の同事業所数は横ばいで推移している。そうした点からもソフト面に重点を置く楽器小売事業者は増えており、今後さらにその傾向は顕著となる可能性があるとしている。(編集担当:慶尾六郎)