【今週の展望】日米中央銀行イベントの通過後に来るものは?

2016年06月12日 20:05

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利上げの可能性が薄いFOMCよりも、追加緩和の可能性が薄い日銀会合よりも、英国の国民投票のほうが気になる1週間か?その日付は、来週6月23日。

 前週末10日の終値は16601.36円だった。そのテクニカル・ポジションを確認すると、4つの主要移動平均は全て上にある。下から16642円の75日線、16671円の5日線、16676円の25日線、17711円の200日線。25日線までは75円の差で1日で十分届くような距離だが、200日線までは1110円もあり「光年のかなた」に遠ざかった。

 日足一目均衡表の「雲」は、10日時点で16542~16668円。前週は8日に雲を上に抜けて9日終値は雲の上限とほぼ一致したが、10日は雲の下に抜けた時間帯もあり、終値は雲の中。今週は雲の位置がほとんど動かず、上限は13~14日は16668円、15~17日は16658円。下限は16542円でずっと固定される。厚さは116~126円で、1日の日中値幅で楽々通過できるほど薄い。薄雲は、サポートラインとしてもレジスタンスラインとしても効かなくなるもの。なお、雲は今週末の18~20日と来週の23~24日に2回、ねじれる。23日は英国のEU離脱を問う国民投票の投票日で24日にその結果がわかるので、二重の意味で変化日になるかもしれない。

 ボリンジャーバンドでは、10日終値は16473円の25日線-1σと16878円の+1σの間のニュートラルなゾーンにある。-2σは16271円、+2σは17080円にあり、ラインの間隔が詰まっている。ボリンジャーバンドは小さな値動きが続くとラインの間隔が詰まる性質があり、ローソク足チャートのパターンで言えば「三角もちあい」の時にそうなりやすい。三角もちあいの結末は「上放れか下放れ」だが、それはボリンジャーバンドの間隔が詰まった時にも言える。

 オシレーター系指標は、「売られすぎ」シグナルが1つだけ点灯している。RCI(順位相関指数)で、売られすぎ基準の-50を下回る-53.1だった。それ以外ではストキャスティクス(9日・Fast/%D)も40.7で低位にある。25日騰落レシオは110.1、25日移動平均乖離率は-0.5%、RSI(相対力指数)は48.8、サイコロジカルラインは7勝5敗で58.3%、ボリュームレシオは55.5だった。「買われすぎ」に近い指標が一つもなく、今週はいくぶん、下より上方向に動きやすいと言える。

 6月3日時点の需給データは、信用買い残は5月27日時点から527億円増の2兆5426億円で、3週ぶりに増加した。信用倍率(貸借倍率)は3.57倍から3.75倍に増加。裁定買い残は746億円減の1兆8432億円で、4週ぶりに減少した。

 東証が発表した5月30日~6月3日の週の投資主体別株式売買動向によると、外国人は2週連続の1461億円の売り越し、個人は4週ぶりの348億円の買い越し、信託銀行は5週連続の511億円の買い越しで外国人の売り越しがまさっていた。20億株、2兆円割れの薄商いが続く中での週間騰落192円安の主役は、やはり外国人だった。

 カラ売り比率は6月6日が41.7%、7日が38.7%、8日が37.9%、9日が39.0%だったが、10日は47.1%にはね上がった。「異常ライン」の40%をはるかに超え、同じメジャーSQ日の3月11日の33.2%を大きく上回った。カラ売り比率がこんなに高いと上値は強く抑え込まれるが、これが10日限定の異常値なら、週明けには反発が期待できる。

 日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)は6月10日終値では25.96で、3日終値の26.86から0.9ポイント下落しており、メジャーSQ週を通過していくぶん落ち着いてきている。

 テクニカル的に言えば、前週はローソク足の「実体」(始値と終値の差)の長さがだんだん短くなる「三角もちあい」のパターンだったが、今週、それが上放れ、下放れのどちらになるかと言うと、上放れの可能性のほうが大きい。「SQ後週」の過去22ヵ月の成績は11勝11敗でイーブンだが、上放れになりそうな理由はいろいろある。10日は異常なカラ売り比率に上値を強く抑えられ、オシレーター系指標も「売られすぎ」シグナルがみられ全般的に低位にあった。上値追いを阻むレジスタンスラインの役目を果たす日足一目均衡表の「雲」も薄くて抵抗力が弱まり、雲の上に出やすい。9日、10日の続落により押し目買いが入りやすく、10日のザラ場終盤は週末要因をはね返して上昇をみせていた。

 今週は新規IPOが再開し、LINE<3938>の7月15日の新規上場承認も明るい話題だろう。為替のドル円が107円前後をキープできれば、週明け13日以降の反発、上値追いは有望ではないだろうか。

 では今週、どこまで上昇できるか。10日に出たSQ値(16639円)、75日線(16642円)、9日の終値でもあった雲の上限(16668円)は、難なく突破できるだろう。25日移動平均線(16676円)は上値追いの大きなターゲットになりそうだが、雲の上限のすぐ上なのでちょっと物足りない。8日には16830円で高値引けしたから、さらに上昇して16878円の25日線+1σあたりまでの反発はあってもおかしくない。しかしその上の17000円の節目となると6月2日以来、16900円台さえも一度もかすっていないために期待薄。10日終値から約300円高い16900円が上値の限界になりそうだ。

 一方、下値のほうは限定的。前週は6日と10日にザラ場で16500円を割り込んだが、終値では一度も下回っていない。10日のNY市場が大幅安なのでCME先物清算値終値は16290円だったが、為替のドル円レートは107円前後を維持していた。今週もドル円が105円台になるような円高急進局面でも来ない限り、雲の下限(16542円)は割り込んでも、25日線-1σ(16473円)の少し上にある16500円はサポートラインとしてしっかり機能すると想定する。FOMCも日銀会合もあまり期待されていない分、為替の大きなドル安、大きな円高を招く事態にはならないだろう。

 ということで、今週は反発局面はあってもトータルの値動きは小さく、日経平均終値の予想変動レンジは16500~16900円とみる。

 最近の東京市場で目立つのは「イベント待ち」の停滞。消費増税の先送り表明、ECB理事会、OPEC総会、アメリカの雇用統計、FOMC、日銀会合と、毎週毎週イベント待ちでモタモタし、薄商い。次は6月23日実施のEU離脱の是非を問う英国の国民投票がある。だが、4年前の第二次安倍内閣発足をはさんだ約半年間「アベノミクスの青春」の頃には、そんな現象はあまり見られなかった。とりあえず待って様子見するのは、期待に胸はずませて買い向かえるような強い材料が見当たらないからで、自信のなさの裏返し。では、東京市場はどんな材料があれば、自信を取り戻せるのだろうか?(編集担当:寺尾淳)