エスティマ、大規模マイチェンで延命処置。新型は東京オリンピックでFCVとして登場か?

2016年06月11日 20:11

Toyota_Estima

大規模マイナーチェンジを受けたエスティマ、左からAERAS PREMIUM-G、ハイブリッドAERAS PREMIUM-G、AERAS PREMIUM-Gの3台。次期エスティマはレクサスブランドとなり、FCVとなって登場か?

 トヨタ・エスティマが10年ぶりに大規模なマイナーチェンジを受けた。現行モデルは3代目にあたり、2006年のフルモデルチェンジで誕生した、トヨタ車として極めて稀な長寿モデルだ。

 そもそもエスティマは、1990年に誕生した日本で最初の本格的な7シーターの乗用車として非常に凝った設計が自慢の和製ミニバンだった。それまでの国産マルチパーパスな乗用車は、キャブオーバー型コマーシャルバン(貨物車)であるハイエースなどを着飾っただけのワンボックス型バンだった。

 ところが今回の3代目エスティマの大規模なマイナーチェンジをみると、日本のミニバン市場を牽引してきたエスティマの立ち位置が変わってきたように思える。

 トヨタ製ミニバンの“いまどきの売れ筋”は、2015年4月-2016年3月期販売での実績を見ると、比較的廉価な2リッター5ナンバーミニバン「ノア」「ヴォクシー」「エスクァイア」3兄弟と3ナンバーで大排気量V6エンジン搭載の「アルファード」「ヴェルファイア」だ。

 エスティマは、車名別国内登録車年間販売でも、2013年4月-2014年3月期に3万5669台(23位)を記録し、それを最後に登録車ベスト30から姿を消している。

 初代エスティマ開発陣の“本気度”は凄かった。1989年の東京モーターショーでコンセプトモデルを発表、翌1990年5月に「天才タマゴ」のキャッチフレーズで市販化した。卵をイメージさせる前衛的スタイルは「高性能ニューコンセプトサルーン」として注目を集めた。従来のワンボックスカーであるなら前輪前・運転席下にエンジンを搭載するキャブオーバー型が一般的な時代に、4気筒エンジンを横に75度も寝かせて搭載しフラットフロアを得た。前輪も運転席の前方に置くことにより、世界にも例を見ないアンダーフロア型ミッドシップのワンモーションフォルムで登場したのだ。

 エスティマは当時としては商用バンをラインアップしないモデルだったことも特異だった。サスペンションも前軸はマクファーソンストラット式、後軸はダブルウィッシュボーン式の4輪独立懸架を採用し、高級感を前面に推しだした。斬新なエクステリアデザインは、トヨタがアメリカに設立したCALTY(キャルティ/Calty Design Research Incorporated)が担当したとされる。

 この画期的なパワートレーンを持ったトヨタ独自もミニバン初代エスティマは、2000年1月に2代目にスイッチするまでの長寿モデルとしてトヨタ製ミニバンを代表する車種に育った。

 今回のマイチェンで受けた変更は多岐におよぶ。フロントデザインは一新され、ヘッドランプはアッパーグリルからサイドに回り込む薄型に変更。アッパーグリルを大口化し、バンパーコーナーを張り出した造形とした。リアのコンビネーションランプは立体的に造形した赤基調で、LEDライン発光ストップランプとした。ボディカラーはミニバンで初めて、ブラックルーフと組み合わせたツートーン仕様3色も登場した。

 大きく変わったのは、パワートレーンの整理だ。これまで上級モデルに設定していた3.5リッターV6エンジン搭載車を廃止。2.4ハイブリッドと2.4ガソリンの2種類とした。また、レザーパッケージ廃止により本革仕様車もなくなった。グレード体系も「AERAS」系だけに統合され、複雑多様なグレード構成は一気にシンプルになった。

 今回、エスティマの大規模マイチェンを巡ってさまざまな噂が流れている。ひとつは「10年以上のモデル延命策でエスティマはフェイドアウトする」というもの。トヨタの中型ミニバンは、ノア3兄弟とアルファード系が担う。なかでもガラパゴスとも評される売れ筋の「悪顔系・強面ミニバン」で十分という考え方だ。

 もうひとつは、2020年の東京オリンピック前に「新型エスティマ燃料電池車(FCV)」を開発して市販。世界に向けて大々的にアピールするというもの。この東京オリンピック開催までには、昨年の東京モーターショーでコンセプトモデルを発表したレクサスの最上級サルーンLS-FCVが発売されているはずで、エスティマFCVは、もしかしたら“レクサスブランド初のミニバン”として名前を変えて登場するのかもしれない。2019年の東京モーターショーに注目したい。(編集担当:吉田恒)