2015年の日本におけるクルーズ人口は、4年連続の20万人台を記録し、寄港回数も中国からのクルーズ船が多く訪れ過去最多の1,454回に上った。ところが一方で日本籍客船は低水準にとどまり、98,000人にまで落ち込んでいる。
2015年の日本におけるクルーズ人口は、4年連続の20万人台を記録し、寄港回数も中国からのクルーズ船が多く訪れ過去最多の1,454回に上った。訪日クルーズ旅客数も過去最多の1,116,000人で、海外の大型クルーズ船の寄港誘致が各地で盛んに行われている。
東北経済連合会も海外クルーズ船の誘致に積極的だ。3月にはアメリカの見本市に初参加し、新潟を含む東北7県8港を海外に向けてアピールした。東北は寄港実績で九州などの先進地に後れをとっているが、訪日客を増やすにあたって海外クルーズ船の存在を無視できないのが現状だ。
大型クルーズ船が寄港すると、周辺の商業施設が訪日客で賑わい、沢山のお金を落としていく。15年7月に大型クルーズ船「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」が鳥取県に寄港した際には、乗船していた約4,000人の中国人客が同県の日吉津村を訪れ、村内の店舗で“爆買い”し、わずか数時間でほとんどの商品がなくなるという事態に。村の人口は3,455人で、これまでに観光ツアーで一度に訪れた客は最多でも200人余りであったというのだから、予想だにしない爆買いにただただ圧倒されたに違いない。
ところが、クルーズブームが取り沙汰される一方で、日本籍客船が低水準にとどまっている。クルーズ元年と言われた1989年は日本籍客船だけで132,000人を集客していたが、2015年は98,000人にまで落ち込んでいる。
そこで、日本郵船<9101>は日本発着クルーズ以外にも、アジア市場への進出を検討しているという。だが、低料金の外国船との競争に勝てるのかという大きな課題がある。
また、日本のクルーズは世界最高とも言われるほど料金が高く、日本におけるクルーズの大衆化を阻んでいるという見方もある。日本船籍は「航海士・機関士は日本人に限る」「60日に一度、海外に出る義務」「消費税の付加」「同一寄港地や同じ航路のクルーズは年3回まで」「カジノの禁止」など国内法規の制約を受けることになるため、料金が高額になる傾向がある。
日本船が不利になる規定を変更できればいいのだが、そう簡単にとはいかなさそうだ。規制に関する議論が深まり何らかの打開策を見いだせたら、本物のクルーズブームが訪れるかもしれない。(編集担当:久保田雄城)