需給データを確認しておくと、前々週、4日続落後の7月8日時点の需給データは、信用買い残は1日時点から345億円増の2兆3217億円で、4週ぶりの増加。信用倍率(貸借倍率)は3.84倍から4.04倍へ2週ぶりに増加。信用評価損益率は-15.84から-18.00へ2週ぶりに減少した。裁定買い残は1731億円減の5772 億円で、6週連続で減少している。
東証が発表した7月4日~8日の週の投資主体別株式売買動向によると、外国人は105億円の買い越しから1748億円の売り越しに転換。個人は逆に119億円の売り越しから1691億円の買い越しに転換した。信託銀行は10週連続の買い越しだが、買越額は2282億円から1525億円に減った。6日続伸から4日続落へ、週間騰落が730円高から575円安へ大転換した裏側では、まるで砂時計をひっくり返したような需給関係の激変があった。前週は5日続伸、1390円高だったので、砂時計は再び、ひっくり返されている。
前週のカラ売り比率は、11日は39.2%、12日は38.7%、13日は40.2%、14日は41.2%、15日は38.9%。依然40%前後の高い水準が続いている。前々週、カラ売り比率が40%を超えて異常に高まっていたので、ひとたびリスクオンすれば「カラ売りの踏み上げ」がクルマのターボチャージャーのような機能を果たしてドンと上昇加速かと思いきや、新規のカラ売りのブレーキも同時に踏まれて上値追いは抑えられていた模様。13~15日の上昇幅は100円台にとどまった。しかしそのほうが、上昇のエネルギーは日持ちする。
日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)の7月15日終値は28.79だった。8日は30台、11~13日は29台、14~15日は28台と、恐怖指数は徐々に下がっている。その分、リスクオンしていた。
日経平均は6月24日の大暴落の翌営業日27日以来、6日続伸、4日続落、5日続伸と、まるでパンダの模様のような白黒がはっきりした3週間が経過した。そのパターンでいけば3連休明けの今週は「黒星がくる並び」になる。売られすぎシグナル満載のテクニカルデータも、それを暗示している。
とはいえ、前週は「踏み上げターボ」を作動させながら新規カラ売りのブレーキを同時に踏む高度な〃ドライブテク〃によって「ワルノリしすぎて息切れする」事態を巧みに回避し、上昇余力はまだ残っている。
チャート上、ねじれた後の「雲」を抜けて、その上に出られるだけのエネルギーは温存していると思われる。19日終値で50円程度上昇し、「雲」の上限16542円を抜けてその上に出る可能性は、十分あるだろう。しかし、25日線+2σの16549円をクリアしてさらに上値追いするというのは、ドル円が107円台になるような為替レートの支援でもなければ無理がありそうだ。そのドル円レートは前週、週初の100円台から週末の106円台タッチまで6円近くも円安が進行しており、これ以上を望むのはいくら何でも欲張りすぎる。
一方、下値のほうは警戒が必要。前週は史上最高値を連日更新したNYダウも、今週はピークを迎えるアメリカの大手企業決算という「くせ者」が待ち構えている。1~6月期は全般的には前年同期比で減益の予想。リスクオンはいつまでも続かないはず。
日経平均も単純な利食い売りだけでなく、為替の円高とセットの先物主導の売り仕掛けの口実になりそうなものが、ECB理事会、訪日外国人客数、日銀の追加緩和や財政出動に否定的な要人発言、東京都知事選挙の情勢分析報道、トルコのクーデター、前週もフランスで起きた海外のテロなど、いろいろと考えられる。25日線の15752円までは下げすぎだとしても、心理的な節目の16000円に下支えされる局面がくることは、ありそうだ。
ということで今週は「一服する踊り場の週」になって、今週の日経平均終値の予想変動レンジは16000~16550円とみる。
13日に東京市場は「ブレグジット・ショック」の全値戻しを達成し、同じ日に英国でメイ新首相が就任して組閣を行ったが、EU離脱は手続のスタート地点に立っただけ。先行きについて言われるのは、スコットランドの独立も含めて「こうなるかもしれない」「こうなる可能性もある」といった〃想像力が生み出す話〃ばかり。今のところ、そこに確かなことは、何もない。「想像力が権力を奪う(L’imagination prend le pouvoir)」という有名な言葉があるが、まさに想像力は力を持ち、世界のマーケットを動かしている。
(編集担当:寺尾淳)