7月27日、任天堂<7974>が2016年4~6月期(第1四半期)決算を発表した。
売上高は31.3%減、営業損益は51億円の赤字、経常損益は386億円の赤字、四半期純損益は前年同期の82億円の黒字から245億円の赤字に転落した。大幅減収、損益の赤字の決算で、もし、無借金で自己資本比率が89.50%もなければ、深刻な事態だった。
ハードウェア(ゲーム機)は、ソフトウェアにこれといったヒット作が出なかったため家庭用(据置型)の「Wii U」の販売台数は53%減、携帯型の「ニンテンドー3DS」の販売台数は7%減。4~6月期の平均為替レートはドル円が前年同期の121円から108円へ、ユーロ円が134円から122円へ円高が大きく進んだため、350億円の為替差損を計上した。ハード、ソフトの販売不振に円高の直撃も受け、赤字決算になった。
2017年3月期の通期業績見通しは、売上高0.9%減、営業利益36.9%増、経常利益56.3%増、当期純利益112.1%増(約2倍)の増収増益で、年間150円配当とともに修正していない。
7月6日にアメリカ、22日に日本でリリースされたスマホ用ゲームアプリ「ポケモンGO」はいま爆発的な人気を博し、社会問題にもなっているが、任天堂は連結業績への寄与は限定的と発表している。任天堂の関連会社「ポケモン」への出資比率は32%で、持分法適用会社。しかも「ポケモンGO」はポケモンとアメリカのナイアンティックの共同開発で、配信・運営はナイアンティックが行っている。大ヒットしても任天堂本体には利益が流れ込みにくい構造になっている。
任天堂は基本的にゲーム機というハードウェアで稼いできた企業で、ソフトウェアは「スーパーマリオ」にしても「ポケモン」にしても「どうぶつの森」にしても、ハードとともにソフトが売れて収益に貢献してきた。そのため「ポケモンGO」のようにハード抜きでソフト(スマホアプリ)単独でヒットしても、なかなか収益に結びつきにくい面がある。
7月下旬に「ポケモンGO」周辺機器として、手首に巻いたり、胸ポケットに装着したりし、ポケモンに接近すると振動や光で知らせるウエアラブル機器「ポケモンGOプラス」が発売される予定だったが、9月に延期された。「ポケモンGO」のバージョンアップ遅れと、機器の通信精度の向上に時間をかける必要があるため。ただしこれは任天堂自体が販売するハードウェアなので、ヒットすれば下期の収益に貢献できるだろう。
ソフトウェアでは年末商戦向けに11月にポケモンシリーズ最新作「ポケットモンスター サン・ムーン」が発売される予定だが、期待の新型家庭用ゲーム機「NX」の発売は2017年3月の予定で、年末商戦には間に合わない。期末なので3月期の業績にもほとんど寄与しない。
とはいえ、「ポケモンGO」は、DeNAとも組んだスマホアプリへのチャレンジが大成功を収め、世界的に任天堂のイメージがアップした明るい話題であることは確か。ピカチュウなど世界で愛される「Pokemon」キャラクターのソフト資産をそのまま活かし、問題視されたソーシャルゲームの「ガチャ課金」とは無縁で、いい意味で「親が子どもを安心して遊ばせることができるようなゲーム」に徹する「任天堂らしさ」を貫いている。それが回り回って、思わぬところで波及効果が生まれ、業績に寄与するかもしれない。