■下半期の資源市況回復に期待と不安が入り交じる
2017年3月期の通期業績見通しは、三井物産<8031>は最終当期利益2000億円だけを公表し修正なし。14円減配して50円の予想年間配当も変わらない。松原圭吾最高財務責任者(CFO)は「資源は依然、供給過剰で短期的な価格上昇は見込みにくい」と見通しを語る。そのエネルギー事業の落ち込みをカバーする役割を期待されてのが金属事業と、非資源の機械・インフラ事業である。
三菱商事<8058>は最終当期利益(連結純利益)だけを公表し2500億円の黒字を見込んでいる。修正はなし。10円増配して60円の予想年間配当も変わらない。最終利益の進捗率は40%を超えたが、第1四半期は資源権益の売却益や株式売却益のような一過性の利益が320億円もあり、それを割り引いて考える必要がある。最高財務責任者(CFO)の増一行常務執行役員は「LNG価格などの底はこれから。資源相場の先行きは楽観していない」と気を引き締める。5月に発表した中期経営計画では、非資源分野で主体的に強みや機能が発揮できる事業への成長投資を実行していくとしている。
伊藤忠商事<8001>は収益1.6%減、営業利益6.0%増、税引前利益43.5%増、当期純利益35.0%増、最終当期純利益45.6%増という減収、大幅最終増益見込みに修正なし。5円増配して55円の予想年間配当も変えていない。非資源分野の売上シェアが大きい強みを活かし、減損損失を前期に前倒し償却した効果があらわれれば、通期は過去最高益で着地しそうだ。アメリカの投資ファンドが会計処理に疑問を呈したが、8月の決算発表時の記者会見で鉢村CFOは指摘された3点について根拠を挙げながらていねいに反論し、「会計処理はすべて適正」としている。
住友商事<8053>は今期から売上高の通期業績予想を公表しない方針。税引前利益21.3%増、最終当期利益74.4%増の通期業績見通しも、前期と同じ50円の予想年間配当も修正していない。最高財務責任者(CFO)の高畑恒一専務執行役員は「足元の資源価格は期初の前提を上回っている」と述べている。メディア事業などへの投資効果があらわれて本格的に回復するのは来期2018年3月期とみている。
丸紅<8002>は売上高2.4%増、営業利益4.1%減、税引前利益109.8%増(約2.1倍)、当期利益99.9%増(約2.0倍)、最終当期利益108.8%増(約2.1倍)の増収、大幅最終増益の通期業績見通しも、前期から2円減配して19円の予想年間配当も修正していない。前期の減損損失を「一過性」とみなして採算のV字回復を見込んでいる。
双日<2768>は第1四半期が減収、最終減益だったが、売上高8.1%増、営業利益50.5%増、税引前利益19.7%増、最終当期利益9.5%増の増収増益を見込む通期業績見通しも、前期と同じ8円の予想年間配当も修正していない。田中精一最高財務責任者(CFO)は「円高や市況変動のリスクはあるが、通期業績見通しを変更するほどの状況には至ってない」と述べている。(編集担当:寺尾淳)