矢野経済研究所では、国内のインポートブランド市場の調査を実施した。調査期間は2016年4月~7月、調査対象は欧州、米国の衣料品・服飾雑貨、ウォッチ、ジュエリー、クリスタル製品・陶磁器、アイウェア、筆記具、ブランドを輸入販売する商社、メーカー、小売業者、また各インポートブランドの日本法人等。調査方法は同社専門研究員による直接面談、電話によるヒアリング、ならびに文献調査を併用した。
2015年の国内インポートブランド(主要15アイテム分野)市場規模は小売金額ベースで、前年比7.6%増の2兆3,664億円となり、5年連続のプラス成長であった。2015年は、2014年以上にインバウンド(訪日外国人客)需要が拡大した年であったという。一方で衣料品・服飾雑貨品についてみると、前年より更に大きく伸長することが予想されたにも関わらず、実際の成長率は2.6%増(2014年は7.4%増)に止まった。富裕層の消費は依然活発であったことを考慮すると、商品価格の値上げによる中間層の消費減退が想像以上に深刻であったことを印象付ける結果となった。
2016年の前半を折り返した段階での市況としては、2015年の好調さは薄れているようである。中間層の消費減退が継続していることや、インバウンド需要の減速が大きな要因である。ブランド側の動きとしては、商品価格の値上げやエントリー商品の投入など、一部では積極的な動きをするブランドもあるものの、既に決まっている新規出店やリニューアルなどへの投資以外は静観するブランドが多い。
さらに、富裕層消費に影響を与えると考えられる株価も2015年に比べ下落傾向となっており、先行きは不透明な状況であるとしている。このような状況から、2016年の国内インポートブランド(主要 15 アイテム分野)市場規模は2015年比8.5%減の2兆1,649億円と予測している。
2015年についてアイテム別にみると、主要アイテムのうち8アイテムの市場規模が前年比で拡大した。なかでも拡大が目立ったアイテムとしては、インポートウォッチ(前年比17.6%増)、インポートジュエリー(前年比12.2%増)が挙げられる。いずれも、インバウンド需要の拡大に因るところが大きいという。なお、インポートウォッチに次ぐ市場規模となるインポートバッグ・革小物に関しては、中間層の消費減退の影響を大きく受けたものの、好調なインバウンド需要に支えられ、前年より拡大した。
一方、インポートシューズに関しては、主要アイテムの中では前年割れが目立つ結果となった。顧客層としては、他のアイテムと同様ではあったものの、暖冬や、ファッショントレンドに影響されブーツが不振だったことや、近年のトレンドとなっているスニーカーやカジュアルシューズなど、比較的安価なシューズの需要拡大が、市場規模縮小の要因に繋がっているものとみる。ただし、インポートシューズ自体は顧客層を確実に広げつつあり、長期的に見ると、まだ伸びる余地は十分にあるものと考えるとしている。(編集担当:慶尾六郎)