15年の国内ERPパッケージライセンス市場は前年比8.0%増の1,111 億円

2016年08月29日 08:14

 矢野経済研究所では、国内の ERP パッケージライセンス市場の調査を実施した。調査期間は2016年4月~7月、調査対象はERP パッケージベンダー。調査方法は同社専門研究員による直接面談。

 2015年の国内ERPパッケージライセンス市場は1,111 億円(エンドユーザ渡し価格ベース)、前年比8.0%増となった。2014年の伸び率(前年比6.2%増)を上回り、堅調な成長を維持している。ここ数年、円安とアベノミクスによる金融緩和の恩恵を受け、製造業を中心としたユーザ企業の業績が好調となり、IT投資が活性化していたことに加え、一部のERPパッケージベンダーは2015年10月に施行されたマイナンバー制度をきっかけとした人事分野での需要獲得に成功したことなどが、市場成長の理由になっていると考えるとしている。

 マイナンバーを管理する機能そのものは、ほとんどのERPパッケージにおいては通常のバージョンアップで対応したため、直接的に売上増となったわけではない。しかし、マイナンバー制度への関心は高かったため、セミナー開催やキャンペーン等のきっかけを作り、自社製品へのリプレイス促進を図ったベンダーもあったという。

 マイナンバー制度のように、法改正によってユーザ企業の情報システムの改変が必要になる場合には、法改正がERP市場に影響を与える。2016年は、当初2017年4月に消費税増税と同時に軽減税率の導入が見込まれており、軽減税率導入については処理が複雑になるためERPへの投資拡大につながると期待されていたが、先送りが決まった。また、2016年から適用となった改正電子帳簿保存法に対応し、証憑と会計データの連携ソリューションを提供するERPベンダーはあるが、マイナンバー制度や消費税増税への対応と違って一斉に行うものではなく、ユーザ企業の都合を優先させた断続的な導入になると考える。2016 年は法改正等による影響は少ないといえるとしている。

 一方で、経営に貢献する経営基盤の構築というERP本来の目的で基幹システムを見直すニーズがERP パッケージライセンス市場を支えている。会計や人事分野でのグループ導入や、販売管理や生産管理分野での個別開発からERPパッケージへのリプレイスは継続しており、2016 年のERPパッケージライセンス市場(エンドユーザ渡し価格ベース)は、前年比8.1%増の1,200億7,000万円を予測している。

 ERPへの投資は経済動向による影響も受けやすい。イギリスの欧州連合(EU)離脱問題や円高、中国を初めとする新興国の景気悪化、国内個人消費の不振など、昨今、経済全般的に不安定な色合いが強まっており、ERP市場の成長を鈍化させる懸念がある。しかし、単なる老朽化による情報システムのリプレイス目的のみではなく、不安定な経済環境の中で変化に対応し、経営を支えるITプラットフォームを構築するという、基幹システム本来の目的でERPを再構築するユーザ企業も増えている。

 このようなニーズに対応するため、大手 ERP ベンダーは、クラウドを基盤とし、IoT、モバイル、コンシューマライゼーション等次世代のテクノロジーを採用した新製品をリリースしている。とりわけクラウドサービスへのシフトは注目される。システム導入のスピードや導入後の柔軟性、コスト効率等の面で、変化に対応しやすいERPというユーザ企業のニーズに合致しており、今後いっそう利用が進む見通しであるとしている。(編集担当:慶尾六郎)