15年の国内アパレル総小売市場規模は前年比99.8%の9兆3,609 億円 5年ぶりの前年比マイナス成長

2016年10月30日 20:06

 矢野経済研究所では、国内アパレル市場の調査を実施した。調査期間は2016 年7月~9月、調査対象:アパレルメーカー、小売業(百貨店、量販店、専門店、その他)、業界団体等。調査方法:当社専門研究員による直接取材、及び郵送アンケート調査、文献調査を併用した。

 それによると、2015年の国内アパレル総小売市場規模は前年比99.8%の9兆3,609 億円と、2010年以来5年ぶりの前年比マイナス成長となった。品目別では、婦人服・洋品市場が前年比99.6%の5兆8,844億円、紳士服・洋品市場が同100.4%の2兆5,585億円、ベビー・子供服・洋品市場が同99.5%の9,180 億円であり、紳士服・洋品だけが、僅かながらも前年を上回った。

 2015年は暖冬の影響を受け、寒さが本格化する時期が例年より遅かったことから、全体的にアパレル各社の冬物衣料の不振が目立った。特に、商品単価の高い重衣料(コート等)が売れず、寒さが本格化した頃には既にプロパー(正価)販売の時期を逸しセール時期に突入してしまっていたため、前年実績を下回る企業が多く見受けられた。また、百貨店や量販店(GMS)でも衣料品事業の落ち込みが目立つなか、大手アパレル各社においても業績が低迷しているという。

 総務省の家計調査年報によると、衣料品に対する消費支出額も2015年は 3 年ぶりに減少しており、一般消費者の支出抑制も表れている。一方で、専門店は好調を維持し、なかでも商品と価格のバランスに優れた専門店が好調である。こうした専門店の好調さが市場を下支えし、国内アパレル市場全体も微減に留まったものと考えるとしている。

 2015 年の国内アパレル総小売市場規模についてチャネル別に見ると、百貨店は前年比97.1%の2兆600億円、量販店は同93.7%の9,249億円、専門店は同 101.2%の4兆9,616億円、その他(通販等)は同103.4%の1兆4,144億円と、専門店、およびその他(通販等)チャネルが伸びた。

 長期的にみれば、アパレル製品・洋品の総小売市場規模は、少子高齢化や人口減少の影響により縮小していくとみるが、各社のインターネット通販への取り組みや消費者の利便性などから、インターネット通販は今後も有望なチャネルであるものと考える。

 百貨店では、2015 年は全体的にはインバウンド(訪日外国人客)需要があったものの、衣料品事業においてはその恩恵を受けることなく厳しい状況が続いている。特に婦人衣料の不振により、マイナス成長となった。

 百貨店と同様、量販店(GMS)でも、衣料品の苦戦は顕著であり、総合的な品揃えから、下着類などの実需衣料中心の品揃えに特化する店舗も出てくるなど、衣料品事業の早急な立て直しが課題となっているという。

 専門店では、企業により好不調はあるものの、商品と価格のバランスに優れた専門店が好調を維持しており、全体でみれば前年比プラスを確保している。

 その他(通販等)では、カタログ系通販企業では不振が続いているが、ネット系通販企業は依然として好調を維持し、市場拡大に寄与した。(編集担当:慶尾六郎)