アメリカの貿易統計も364.4億ドルの赤字で市場予測の378億ドルより良く、赤字は1年7ヵ月ぶりの低水準。スターバックスの決算も良かった。しかしトランプ・リスクにはどうしても勝てず午後失速してマイナスに落ち、4日のNYダウ終値は42ドル安だった。為替のドル円は103円台前半、ユーロ円は114円台後半。CME先物清算値は16855円、大阪夜間取引終値は16890円。為替レートの大きな変動がなければ7日の日経平均は横ばいか小幅安で始まりそうだ。
今週は、アメリカの大統領選挙の結果次第で天国と地獄のような違いが出る。言うまでもなく民主党のクリントン候補が当選すればオバマ政権の基本政策が継続される安心感で日米とも株価上昇。トランプ氏が当選すれば、共和党の伝統的な政策通りとはいかず何が起きるかわからないから株価下落。現状では世論調査の結果は伯仲し、どちらに転ぶか、わからなくなった。
6月の英国のEU離脱を問う国民投票の予想外の結果が「トラウマ」になっているのか、投資家心理は「選挙は最後まで何があるかわからない」。それに効くクスリはなく、9日に結果がわかるまで待つしかない。
もし、クリントン氏が勝利を収めたら、トランプ氏はその時点から「過去の人」。マーケットでは前週のトランプ・リスクによる変動分の巻き戻しが起きるだろう。NYダウは最低18250ドル付近まで戻し、為替のドル円は105円台を回復するというシナリオ。日経平均の上値のメドは最低でも前々週10月28日終値の17446円付近で、それにプラスアルファがついて25日線+2σの17577円を超える17600円付近まで上昇できそうに思われる。選挙のようなイベントは、それを通過することそれ自体も好材料になる。
「当選してもクリントン氏にFBIの捜査が及ぶから怖い」と言っている人がいるが、FBIは民主党政権による報復人事への恐怖で「死に体」になってしまうだろう。FBIの捜査官といえども連邦政府の役人だからわが身可愛さでこの先、4年続く権力には逆らえない。「エドガー・フーバーを超えたい」というガラにもない権勢欲にかられたジェイムズ・コーミーFBI長官は、トランプ氏を大統領につけて「キングメーカー」になるという一世一代の大バクチで負けたらスッカラカンになる、ということ。かわいそうなのは、そんな破滅型のボスと一蓮托生の部下たちだ。
一方、共和党サイドの「トランプ=コーミー枢軸」がもしも選挙で勝利を収めて世界を驚かせるケースだとどうなるだろうか? 前週のトランプ・リスクが今度は「今、そこにある危機」に増大し、世界のマーケットが一斉にリスクオフに陥るのはまず確実だろう。為替市場ではドル売り円買いの流れが進む。急速な円高で日経平均の下値のメドは、その下限が16538円で固定される日足一目均衡表の「雲」で止まるかどうかさえも心もとなく、今週のうちは25日線-2σの16464円のさらに下の16400円あたりまで覚悟しておいたほうがよさそうだ。
「今週のうち」というのは、このシナリオでは来週、さらにそれ以後も、株価がもっと下げる可能性があるということ。選挙に勝って調子づいた〃トランプ次期大統領〃は過激発言がますますエスカレートし、安全保障、外交、移民政策、税制、社会保障、経済などあらゆる方面で共和党らしからぬ「とんでも政策」の火種をばらまく恐れがある。大バクチで勝ったFBIは職権を振り回すモンスターと化し、民主党陣営はクリントン氏だけでなく任期満了間近のオバマ大統領の身の上にも災難がふりかかりそうだ。カナダなどへの〃亡命者〃が急増し社会も経済も混乱する。トランプ氏が勝つというのは、それほどまでにアメリカにとっても、世界にとっても、マーケットにとっても、衝撃的な出来事なのだ。
ということで、今週の日経平均終値の予想変動レンジは16400~17600円とみる。クリントン氏勝利、トランプ氏勝利の両方のシナリオを織り込むと、そんな幅になる。世界最強の権力者、ホワイトハウスの新しい主は、はたして「ベスト&ブライテスト」か?(編集担当:寺尾淳)