【今週の展望】要人発言で下げても17000円の防衛力は高い

2016年11月13日 20:19

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もしFRB首脳やトランプ氏の発言が為替の円高、日経平均の下落を招いても、決着がついて大イベントを通過した効果は決してあなどれない。

 トランプ・リスクで週間騰落が541円安だった11月4日時点の需給データは、信用買い残は10月28日時点から767億円増の2兆1949億円で3週ぶりに増加。信用倍率(貸借倍率)は2.52倍から3.05倍へ3週ぶりの増加。信用評価損益率は-10.47から-12.37へ3週ぶりの大幅な悪化。裁定買い残は1803億円減の9664億円で3週ぶりの減少だった。10月31日~11月4日の投資主体別株式売買動向を見ると、外国人は645億円の5週ぶりの売り越し、個人は1252億円の5週ぶりの買い越し、信託銀行は259億円の2週連続の売り越しだった。週間騰落が261億円のプラスから541億円のマイナスへ一変すると、売り手と買い手がそっくり入れ替わる。

 前週のカラ売り比率は7日が37.2%、8日が39.6%、9日が42.9%、10日が38.8%。11日が38.2%。40%を超えたのは919円安の11月9日だけだった。日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)の11日終値は21.55で、4日の終値25.54から3.99ポイント下落した。900円幅の「超いってこい」だった2日間は、リスクオフで919円安の9日に27.65まではね上がったが、リスクオンで1092円高の10日には21.44に急落している。為替も株価も恐怖指数も、上下に大きく振らされた1週間だった。

 その前週末11日のNYダウは39ドル高で5日続伸。週間全勝で史上最高値連続更新。NASDAQも反発。NY外為市場は休場だったがロンドン時間のドル円は106円台後半、ユーロ円は115円台後半。大阪先物夜間終値は17430円、CME先物終値は17410円で、それほど大きな変化はない。

 11月は前週までに、アメリカでは雇用統計の発表も大統領選挙という世界的な大イベントも、日本ではSQも終わり、日米の決算発表はそのほとんどをすでに消化した。日本では事実上、金融大手や損保大手を残すだけになった。今週は経済指標に重要なものもあるが、一番注意したいのは「要人発言」だろうか。FRBの首脳はイエレン議長が17日に議院証言を行うほか、副議長も理事も講演活動のラッシュ。12月の利上げは「既定路線」とみなしていいのかどうか、それで確認できるはず。さらに要人中の要人、トランプ次期大統領は17日に安倍首相と会談する予定。その一挙手一投足、誰と会って何を言うか、どんな人事構想が浮上するかなどが逐一報道され、マーケットにも影響を及ぼすだろう。その中には上げ材料もあれば下げ材料もあるはず。とはいえ、大統領就任式の1月20日まであと2ヵ月以上もあり、修正できる時間は十分残されているので早合点は禁物。

 前週は、大統領選挙をめぐって激しく乱高下した末、週間騰落は469円高だった。11日終値17374円は、テクニカル的にみればトレンド系指標はやや買われすぎに傾いているが、オシレーター系指標はニュートラル。そんな中、上値は11日前場に到達しながら頭を抑えられた17621円がメドになりそうだ。というのは、11日に算出された11月SQ値が17596.78円で、ボリンジャーバンドの25日線+2σが17654円にあり、このあたりの水準は今週も限界点になるのではないかと考えられる。その11月SQ値は「まぼろし」にはならなかったが、レジスタンスライン(上値抵抗線)にはなりうる。それを超えたとしても終値ベースでは50円ほど上積みする程度で、為替のドル円が107円台に安定的に乗せない限りは、17700円のザラ場でのタッチはあっても終値では厳しいと思われる。前週、ドル円107円はあとわずかでクリアできなかった。

 一方、下値のほうは17000~17100円のゾーンに、17101円の25日移動平均線、17063円の5日移動平均線、17011円の9月SQ値が横たわっている。キリのいい17000円も心理的な影響力はある。今週はこのゾーンがサポートライン(下値支持線)の役割を果たし、たとえFRB首脳やトランプ次期大統領の発言によって為替が円高に振れて日経平均が下げたとしても、よほどのことでもない限り17000円割れはないと思われる。前週に決着がついて大イベントを通過した効果は、決してあなどれない。夏場から東京市場をおおっていた「薄商い」の症状がこのところ回復をみせているのも、下げ局面で押し目買いが入りやすくなり心強い味方だろう。

 ということで、今週の日経平均終値の予想変動レンジは17000~17650円とみる。

 トランプ次期大統領は、家族を壇上に上げての、まるでヨーロッパの騎士道や「ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige/高貴なる者の義務)」を垣間見せるかのような「勝利宣言」のパフォーマンスが評価され、人物像の見直しがなされている。しかしそれは裏を返せば、選挙運動中の過激な発言、下品な発言の数々は、感情が理性に対して優越する低レベルの選挙民に迎合し、票の数を稼ぐための方便「反知性主義ポーズ」「偽悪ポーズ」だった、ということにはならないか? 偽悪者は、時として偽善者以上にタチが悪い。マーケットに関わる人はこの先、油断禁物だ。(編集担当:寺尾淳)