東北大らがバイオ工学による天然ゴムの試験管内合成に成功 地球温暖化問題などへの貢献に期待

2016年11月21日 08:22

 天然ゴムは、化石燃料から合成される合成ゴムでは再現不可能な優れた物性を有するため、現在においてもタイヤなどのゴム工業製品には必要不可欠な天然ポリマー。特に、近年のモータリゼーションの加速に伴いタイヤ製造に必要となる天然ゴムの需要が年々伸び続けており、世界の年間需給規模は1200万トンを超えているという。

 現在、産業的に利用される天然ゴムの大半は、熱帯から亜熱帯地域のプランテーションで栽培されるパラゴムノキより採取されるラテックスより生産されている。ラテックス中では、天然ゴムの分子はリン脂質一重膜で覆われたゴム粒子として存在している。世界的な需要の上昇に対応するため、パラゴムノキを中心とした植物における天然ゴム生産量の向上が強く求められており、天然ゴム高生産品種の分子育種や代替生物による生産などの方法が提案されてきた。そのためには、まず天然ゴムの生合成メカニズムの解明が不可欠だったが、分子量 106以上にも及ぶポリマーがどの様に酵素で生合成されるかは未解明だった。

 今回、東北大学大学院工学研究科の高橋征司准教授、山下哲助教、中山亨教授(バイオ工学専攻応用生命化学講座)らは、住友ゴム工業、埼玉大学との共同研究により、天然ゴムの生合成に必要なタンパク質を発見し、それらを再構成する手法を開発した。これにより、天然ゴムに匹敵する分子量のポリイソプレンを試験管内で合成することに成功した。

 この研究では、これまで成し得なかった、再構成された酵素による試験管内天然ゴム合成に成功し、長年にわたり未解明であった天然ゴム生合成機構の一端を解明した。ここで開発された実験手法は、生合成酵素の反応触媒機構の分子レベルでの解明につながる重要な基盤技術となるという。また、天然ゴム生合成に重要な3つのタンパク質が解明されたことで、それらのタンパク質を指標とした天然ゴム高生産型植物の分子育種が可能となるとともに、遺伝子組換え技術を利用することで、代替植物における天然ゴム生産の可能性も開けた。

 大気中の二酸化炭素を固定し有機化合物を生産する植物において、産業的に重要な高分子材料である天然ゴムを高生産させることで、地球温暖化問題、エネルギー問題の解決にも大きく貢献できるとしている。(編集担当:慶尾六郎)