前週4日間のカラ売り比率は、11月28日が37.2%、29日が39.4%、30日が36.5%、12月1日が36.2%、2日が38.2%で、一度も40%を超えず、引き続きノーマル。マーケットのリスクオン/オフを示す日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)は、11月29日、30日は20を割っていたが、12月2日終値は20.86で11月25日の終値19.97から0.89ポイント上昇した。やはり4日のイタリアの国民投票がリスクを意識させている。
さて、2日に発表されたアメリカの雇用統計の結果は、非農業部門雇用者数は+17.8万人で市場予測の+18万人よりやや少ないが、完全失業率は10月の4.9%から4.6%に大幅改善し9年ぶりの低水準。しかし10月の非農業部門雇用者数は+16.1万人から+14.2万人に下方修正され、平均時給は-0.1%、労働参加率は10月比-0.1ポイントと、決して楽観はできない数字。そのため直後、アメリカの長期金利は低下し為替市場ではドルが売られたが、マーケットでは「今月のFOMCでの利上げ決定に向けて視界良好」という解釈が支配的になっていた。
2日のNYダウは21ドル安。NASDAQ、S&P500はプラス。NY時間の為替レートはドル円が113円台半ば、ユーロ円が121円台前半で円高進行。大阪夜間取引終値は18340円。CME先物清算値は18365円だった。
4日、イタリアでは議会の上院の定数、権限を縮小する憲法改正案の国民投票が実施される。事前の世論調査では改正案否決が優勢。もし否決された場合にはレンツィ首相は退陣を明言しており、イタリア政界の混乱は必至だ。債務問題を抱える国内金融機関への支援の行方は一気に不透明になり、もし反EU色の強い野党連合に政権交代すれば、イタリアのEU離脱のシナリオまで浮上してくる。同じ日のオーストリアの出直し大統領選挙も、反EUを唱える候補者がいる。
すでにドラギECB総裁はユーロ圏の国債買入など緊急対策を用意しているが、成り行き次第では中国が採用している、交換レートの変動幅を一定の値幅内に制限する「管理フロート制」(管理変動相場制)の導入すら取り沙汰されかねない。そんな「投票結果の不安」を抜きにしても8日のECB理事会が持つ重要性は大きく、ドラギ総裁が量的緩和政策(QE)を来年3月以降も続けると表明するのか、しないのか。それだけでもマーケットへのインパクトは違ってくる。
今週はそんな、世界が息を殺してヨーロッパのリスクの行方を見守る「ヨーロッパの週」になりそうだ。しかも東京市場は「メジャーSQ週」なので「鬼門」の火曜日(6日)、水曜日(7日)に下値をたたく不安がある。前週は、悪化しなかった米中の経済統計、OPEC総会の結果に救われた上に742億円にパワーアップした日銀買いにも支えられて週間騰落はプラスになったが、基本的なトーンは「上がりすぎたから調整」で、それは今週も継続する。ドル高、日本株上昇の原動力のアメリカの長期金利の上昇もそろそろ止まりそうで、今週も18000円の大台は守れると断言するのは、楽観的すぎるのかもしれない。
では、下がるとしたら、どこまで下がるのか? テクニカル的には25日移動平均の17717円(2日時点)、マーケット心理的には11月のSQ値17596円がメドになるだろう。6日や7日に「下げてSQ値を調整したい」という意志が働いて先物主導で下げるとしても、やりすぎで「トランプ・ラリーの上昇相場は何だったのだ?」と問われかねない前回のSQ値割れは避けたいはず。それ以上に25日移動平均は〃座り〃がいいだろう。
逆に、上がるとしたら、どこまで上がるのか? テクニカル指標の「買われすぎ」は緩和したが、ヨーロッパにリスク要因が多いメジャーSQ週で、2日のCME先物清算値が18365円だったことを考えると今週、終値で18400円は超えられないとみる。それはアメリカの金利高、ドル高に歯止めがかかり、ドル円レートは114円付近ではね返され、115円には届かないことが前提になる。
ということで、今週の日経平均終値の予想変動レンジは17700~18400円とみる。
ヨーロッパでは共通通貨ユーロを生み出したEUが今、危機に直面している。8日は「無原罪の御宿り」の日だが、EUはまるで「政治、経済の統合」という名の「原罪」を背負って苦しんでいるかのようだ。英国に続き、EEC(欧州経済共同体)のオリジナルメンバーだったイタリアやユーロ圏のオーストリアまで離脱してしまったら、EUはユーロもろとも瓦解への道をたどりかねない。ロシアのプーチン政権、アメリカのトランプ次期政権の影響力にテロや移民の問題もからみ、政治力学の方程式はきわめて複雑だが、フランスの大統領選挙、オランダ、ドイツの総選挙がある来年にかけてが踏ん張りどころになる。(編集担当:寺尾淳)