12月後半から3月にかけては、インフルエンザの流行する時期だ。とくに1月下旬~2月上旬にかけては、インフルエンザの感染者報告数が劇的に増えるピーク時期になると予測されていることからも、細心の注意が必要だ。
風邪やインフルエンザの予防にはまず、手洗いとうがいを徹底すること。そして部屋の湿度のこまめな管理だ。空気が乾燥するとウイルスが増殖しやすくなるうえに、体の防御機能も低下しやすくなってしまう。部屋の湿度を50%~60%程度に保つことで、効果的なインフルエンザ対策になるそうだ。
そして、やはり予防接種だ。予防接種を受けると、インフルエンザの感染のリスクが下がるだけでなく、万が一感染したときにも重症化を防ぐことができるという。ただし、インフルエンザの予防接種は投薬後、約2週間後に効果を発揮するため、流行が始まってから受けても遅い場合がある。また、ワクチンは副作用のリスクの割に感染防御率が低いことや、新型ウイルスには既存のワクチンは効かないこともあり、万全とは言い難い。
流行する直前や流行がすでに始まっている場合、さらに感染してしまった後には、どんな対策やケアがあるだろうか。
まず、もっとも簡単でオーソドックスな方法はマスクを着用することだろう。しかし、インフルエンザウイルスの大きさ0.1マイクロメートルに対し、不織布マスクの繊維の隙間は5マイクロメートル。ウイルスはマスクの繊維の隙間から容易に侵入することができてしまう。最近では、大正製薬HDの立体4層構造のすぐれたバリア性でウイルス飛沫や花粉を99%カットする、使いきりタイプの不織布マスクや、重松製作所のNIOSH(米国労働安全衛生研究所)規格に合格したN95マスクなど、ウイルス防御に特化したマスクも市販されているので、そういうものを利用するようにしたい。しかし、それでもマスクの構造上、インフルエンザウイルスを100%カットすることは不可能だ。
インフルエンザの予防や対策には、普段の食生活を心掛けることも必要だ。ビタミンC、D、B群の摂取をはじめ、ニンニクやショウガなどを積極的に摂って身体を温めることも有効といわれている。
また近年は、インフルエンザ対策に乳酸菌の摂取も注目されている。とはいえ、乳酸菌が直接インフルエンザウイルスに作用するわけではなく、免疫を強化することでウイルスに対する抵抗力を高めようとするものだ。これについては、塩昆布などで知られる食品メーカー・フジッコが「善玉菌のチカラ」というサプリメントを販売しているが、これに含まれるクレモリス菌FC株という乳酸菌は、第47回日本小児神経学会総会、第57回日本食品化学工学会の大会などで、インフルエンザへの効果が発表されている。
さらに、健康ブームなどを背景に注目が高まっているミツバチ由来のプロポリスにも、インフルエンザなどのウイルスに対する感染予防効果が期待できることが、山田養蜂場の研究によって明らかにされている。同社は、弘前大学大学院の松宮朋穂助教を助成し、ブラジル産プロポリスが人の体に備わっている抗ウイルス機構を維持しつつ、ウイルス感染時の過剰な炎症反応を抑えて体の組織を保護する可能性を持つことを、培養細胞を用いた試験で確認した。これまでにもブラジル産プロポリスには抗ウイルス作用を持つとの報告はあったが、ウイルス感染に対抗するメカニズムが解明されたのは初めてとなる。
英国の調査会社Visiongain Ltdのレポートによると、インフルエンザワクチンの世界市場規模は2018年に64億ドルにまで達すると予測されている。これだけ医学や科学が発達しても、未だに市場規模が拡大を続けているのは、それだけインフルエンザが人類にとっての脅威であるとともに、現代医学ではまだ対抗しきれていないという何よりの証拠だろう。新型が現れる度に新しいワクチンが必要になるようでは、いつまで経ってもイタチごっこでしかない。薬やマスクなどにばかり頼るのではなく、身体の防御力を高めることも心掛けたいものだ。(編集担当:石井絢子)