日足一目均衡表の「雲」は前週15日にマジックでもかけられたように「消滅」し、16日は上限も下限も16792円だった。雲の上限から終値までが2609円もあるアナザー・ワールド。今週も雲は雲隠れしたままで、19日の16904円から22日の16999円まで、まぼろしのような「ありて、なきもの」の位置だけがどんどん上がっていく。雲が消える奇妙な現象は来週26日まで続き、受難日ならぬクリスマスから3日目の27日に〃復活〃する。そして雲はその後も17000円台で〃昇天〃が続くスケジュールになっている。
ボリンジャーバンドでは、16日終値19401円は25日移動平均+1σの18963円と+2σの19505円の間にあり、+1σは438円下、+2σは104円上。前々週末よりもポジションがさらに上で、それだけ上値はより限定的になっている。ラビリンス(迷宮)から脱走したイカロスはワルノリして天空高く昇りすぎ、翼の取り付け部分のロウが今にも溶けて取れそう。これ以上、高いのは危険ゾーンだ。
そのイカロスに、オシレーター系指標は7本全部パーフェクトに「買われすぎ」シグナルを点滅させ、警告している。10勝2敗の83.3%で買われすぎ基準の75%をオーバーするサイコロジカルライン、80.4で買われすぎ基準の70をオーバーするボリュームレシオ、93.1で買われすぎ基準の70をオーバーするストキャスティクス(9日・Fast/%D)、+90.9で買われすぎ基準の+50をオーバーするRCI(順位相関指数)、82.2で買われすぎ基準の70をオーバーするRSI(相対力指数)、+5.1%で買われすぎ基準の+4%も+5%もオーバーする25日移動平均乖離率、156.2で買われすぎ基準の130をオーバーする25日騰落レシオ。ここ数年なかったようなレッド・ホット(過熱)ぶりで、激辛グルメなら「失神・救急車レベル」に相当する。トランプ・ラリー特急の暴走ぶりは、もはや歴史に残りそうな境地に達している。
12月9日時点の需給データは、信用買い残は12月2日時点から218億円増の2兆1046億円で2週連続の増加。信用倍率(貸借倍率)は2.23倍から2.15倍へ2週ぶりの減少。信用評価損益率は-7.25から-7.06へ5週連続で改善した。裁定買い残は301億円減の1兆4741億円で2週連続で減少した。
5~9日の投資主体別株式売買動向は、週間騰落570円高のリスクオン5週目ゆえ5週連続で同じパターン。外国人は5625億円の5週連続の買い越し、個人は3709億円の5週連続の売り越し、信託銀行は2997億円の7週連続の売り越しだった。前週の週間騰落は6週連続のプラスだが、連騰は後場の日銀のETF買いに助けられた部分が多分にあったので、投資主体別のパターンに変化が生じているかもしれない。
前週5日間のカラ売り比率は、12日が36.9%、13日が36.1%、14日が34.1%、15日が36.0%、16日が34.9%で、一度も40%を超えていなかった。今年、40%超えが頻繁に起きたのは、「異常な年ならではの異常な現象」として記録されるのか? マーケットのリスクオン/オフを示す日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)も16日終値は18.47で、2日終値の18.65から0.18ポイントだけ下落した。前週は一度も18を割ることがなく、リスクオンも6週目になると限界が見えてきた気配。
前週末16日のNYダウは8.83ドル安だった。ヨーロッパ市場が堅調で、住宅着工件数は-18.7%で市場予測を大きく下回っても原油先物価格が51ドル台まで上昇したため午前中はプラスを保ったが、南シナ海でアメリカ海軍の無人潜水艇が中国海軍の艦船に「捕獲」されたニュースで地政学的リスクが意識されマイナスに沈み、そのまま浮上せず。NY時間の為替はドル円が118円近辺、ユーロ円が123円台前半。大阪夜間取引終値は19260円。CME先物清算値は19305円だった。
日経平均は16日まで9連騰したが、昨年は5月15日から6月1日まで「破竹の12連騰」を遂げた。今週も4戦全勝すればそれを突破して13連騰になるが、阻止されそうな要素として「脱力」がある。スポーツのリーグ戦で、強敵と対戦して見事に勝利をおさめた直後の試合で格下の相手にコロッと負けることは、けっこうある。それは大一番が終わって「脱力」したからだ。
前々週はイタリア国民投票とECB理事会というヨーロッパのリスク、前週はFOMCと日ロ首脳会談という日米のリスクが想定され、それなりに緊張感があった。日経平均はその2週間を9勝1敗のハイペースで乗り切った。だが、今週は日銀会合は「何もなし」がコンセンサスで、緊張感が生まれるようなイベントが見当たらない。営業日が4日しかない上に、キリスト教徒かどうかに関係なくみんなクリスマス気分で、日本は3連休前。東京市場は、大納会前に日経平均2万円への接近を試みる「掉尾の一振」は最終週の来週が本番で、今週はその準備段階。新規IPOが8件もある「師走の新規IPOまつり」のピークで、投資家の関心はそっちに向きやすい。まるでエアポケットに入ったような週だが、そんな時こそ連騰記録が止まったり、小さな悪材料でドンと下がったりしやすい。
エネルギーに乏しい脱力地合いを考えると、テクニカル指標の「買われすぎ」シグナルが真っ赤に〃炎上〃している中で上値追いは難しそうだ。最大限に行けて19505円の25日移動平均+2σまでとみる。一方、下値もそんなにボロボロ売り込まれることはなく、ザラ場でたとえ19000円割れしても終値では戻すとみる。「日本の平均株価は、前日比でプラスにならねばならない」という〃株価の正義〃の守護者たる使命を帯びて昼下がりの東京市場に現れる、日銀のETF買い742億円という名の〃正義の味方〃もついている。日銀買いは、決して脱力しない。
ということで、連騰はストップし、今週の日経平均終値の予想変動レンジは19000~19500円で停滞気味になるとみる。
「掉尾の一振」について、21世紀が始まった2001年以来の過去15年間の記録を調べてみると、大納会5営業日前から大納会までの騰落(終値ベース)は13勝2敗で、大相撲なら優勝か〃それに準ずる〃好成績。プラスでなかったのは2010年と2014年の2回だけだった。今年で言えば、今週22日の大引け際に日経225連動型ETFを成行で買い付け、30日の大納会の大引け際にそれを成行で売れば、売却益を得る確率は86.7%もある。レバレッジ型なら売却益は2倍で信用取引も可能だが、夢の年末ジャンボ・モチ代、となるか? もし失敗しても、それは自己責任。(編集担当:寺尾淳)