エーザイと慶大が認知症の新薬開発に挑む 産学連携で研究ラボを設立

2016年12月26日 08:14

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エーザイと慶應義塾大学の研究者が参画する研究ラボを設立して、認知症の次世代治療薬・予防薬の開発につながる新規創薬標的候補およびバイオマーカーの同定と検証を目指す

 エーザイ<4523>と慶應義塾大学が産学連携で認知症の治療に挑む。両者は、認知症における新薬の探索・開発に関する新たな共同研究の実施について合意した。この共同研究では、エーザイと慶應義塾大学の研究者が参画する研究ラボを設立して、認知症の次世代治療薬・予防薬の開発につながる新規創薬標的候補およびバイオマーカーの同定と検証を目指す。

 合意に基づき、両者は認知症治療に新たなイノベーションを起こす産・医連携拠点として、臨床医学と基礎医学の研究集積地である慶應義塾大学信濃町キャンパス内に「エーザイ・慶應義塾大学 認知症イノベーションラボ」(仮称)を設立。同イノベーションラボは、両者の経験豊かな研究者で構成される予定である。

 慶應義塾大学は、百寿総合研究センターを始めとした、基礎臨床一体型の医学・医療研究に強みを有している。また、ヒトiPS細胞に関する世界トップクラスの研究成果を数多く発表している。

 一方、エーザイは、低分子化合物、天然物由来中分子、抗体を生み出す創薬技術を基盤とした30年以上にわたる認知症分野における創薬活動や、「アリセプト」(一般名:ドネペジル塩酸塩)に関する情報提供活動を通じて培った豊富な経験と知識を有しているという。

 同イノベーションラボにおいては、両者の強みを結集し、健康長寿をベースとして、「遺伝的背景」「環境因子」「防御機構」に焦点を当てたこれまでにないアプローチにより、認知症に対する新しいバイオマーカーおよび創薬標的探索の研究スピードを加速し、新薬創出の成功確率を向上させることを目指す。

 イノベーションラボの機能として、先端質量分析技術を駆使した「臨床オミクス分析機能」、人工知能(AI)等を活用し創薬標的候補特定につなげる「データ解析機能」、iPS細胞技術等を活用し創薬ターゲットバイオロジーを進める「バイオロジカルバリデーション機能」を有するという。これらの研究機能が、中心的コンセプトであるヒューマン・バイオロジーに基づく仮説生成とモデルによる検証を繰り返す「双方向トランスレーションサイクル」を通じ密に連携することにより、正しい疾患の理解に基づく有用なバイオマーカーと創薬標的の発見、および次世代の新薬創出を目指す方針だ。(編集担当:慶尾六郎)