損保2社、認知症の列車事故も補償対象に 個人賠償保険

2016年12月15日 07:43

三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険<8725>が来年1月から「個人賠償責任保険」を改定する。これまで補償されていなかった列車の運行不能損害を対象に加えるという。個人賠償責任保険とは人に怪我をさせたりや物を損壊したりしてしまった際の損害賠償を補償するもので、列車の運行不能損害については「車両に物理的な損壊がなければ補償されない」とされてきた。しかし、ある事故をきっかけに見直しの必要性が一部で指摘されていた。

 その事故とは、2007年に起きた当時91歳の認知症の男性が列車にはねられ死亡した事故だ。列車を運行していたJR東海<9022>は運行遅延の損害賠償として男性の妻と別居していた長男に対して約720万円を求める裁判を起こした。その後今年3月に最高裁が「家族に賠償責任はない」として請求を棄却。しかし「特段の事情がある場合は監督義務者として責任を問われることがある」ともしており、妻と長男を「監督義務者」としたJR東海の言い分に対して「どのような場合に賠償責任を免れるのか」は最後まで明確に示されなかった。

 このニュースは大きく取り上げられ「同居していない長男にまで責任があるのか」「介護の現場を見ていない」という声があがっていた。その一方で「相手がJRのような巨大企業でなく中小企業だったら」と、同様の事故が繰り返された場合を見据えて事故を起こした側に何らかの賠償が必要だとする意見もあった。そして問題の根本はいまだに解決されていない。

 個人賠償責任保険の補償を受けられるのは契約時に決めた「記名被保険者(=本人)」と同居の親族、別居の未婚の子に限られるのが一般的だ。しかし2社はこの被保険者の範囲の拡大も進めている。15年10月には事故を起こした被保険者が重度の認知症などで責任能力が無い場合、その監督義務を負う別居の家族らも補償の対象に加えている。前述の事故での長男がこれにあたる。東京海上日動火災保険<8766>も今年10月に同様の改定をし、損保ジャパン日本興亜<8630>も来年1月に同様の改定をする予定だ。

 高齢化社会で同様の事故のリスクは増える一方だろう。家族のあり方も多様化する中「監督義務者」の問題が解決することは非常に難しい。そのような中で今回の損保各社の動きは大いに評価できるものだろう。(編集担当:久保田雄城)