味の素、南アの食品加工会社に出資。成長見込めるアフリカ市場に楔を打つ

2016年11月09日 08:59

Ajimonoto

味の素の海外拠点は27カ国・地域、販売地域は130カ国以上におよぶ。海外売上高比率は5割を超え、2020年度をめどに70%まで高める方針だ

 アフリカ大陸の人口は、国連発表によれば、2015年時点で推定12億人とされ、2030年には17億人に達するとされる。2011年から2015年におけるサハラよりも南のアフリカ大陸の経済成長率(GDP)は、年平均5%前後で推移。今後も高い成長が見込まれ、巨大な経済圏を形成すると予測されている。

 また、野村総合研究所の資料によると、2010年にはわずか約3億5000万人だったアフリカの比較的裕福な中間層の人口は20年に4億4000万人、30年には5億5000万人に達するという。ひとりあたり国内総生産(GDP)は2000年以降の10年間で倍増。アフリカ大陸の購買力は非常に高まっている。

 こうした同大陸の経済状況を踏まえて日本の味の素は、アフリカ大陸36カ国で事業を展開する南アフリカ加工食品会社大手のプロマシードルHD社の株式33.33%を約558億円で取得、資本参加する。アフリカ大陸に広がるプロマシードル社の販路を使って旨味調味料など味の素の主力製品を販売する。味の素の調味料は東南アジアなどで広く浸透。しかし、アフリカでのシェア拡大は今後に残された課題だった。資本参加をテコに成長期待の高いアフリカ市場を本格的に開拓し、スイスのネスレなど同大陸で先行する欧米メーカーを追う。アフリカ住民が豊かな食文化を求めて日本製の調味料などの需要が拡大することに期待した施策といえそうだ。

 味の素はこれまで、アフリカ事業で苦戦してきた。東洋水産と共同出資でナイジェリア設立した即席麺製造販売会社は、原油安などが響いて同国の経済は不安定で事業が思うように伸びなかった。そのため、来年解散する予定だ。味の素はアフリカの現地企業への出資で、アフリカ大陸におけるビジネスノウハウを吸収し、今後伸長が望める市場に楔を打ち込みたい考えだ。

 プロマシードル社は、ナイジェリア、アルジェリア、コンゴ、ガーナ、アンゴラを主要な展開国としており、粉ミルクや乳製品、紅茶飲料、シリアルなどを生産・販売し、同社ブランドはアフリカ市場に広く浸透している。年間売上高は約800億円とみられる。

 味の素の海外拠点は27カ国・地域、販売地域は130カ国以上におよぶ。海外売上高比率は5割を超え、2020年度をめどに70%まで高める方針を掲げている。東南アジアや北米などで一定の認知と売上を得ており、グローバル企業としての位置づけを確固たるものにするには、アフリカ市場の開拓が避けて通れないとした結果の今回の出資だろう。(編集担当:吉田恒)