ドクターズコスメとは、医師が開発・研究に参加している化粧品、もしくは、皮膚科・整形外科・美容外科などの医療施設で販売または紹介している化粧品をさす。矢野経済研究所では、国内ドクターズコスメ市場の調査を実施した。
それによると、2015年度の国内ドクターズコスメ市場規模は、前年度比104.9%の899億円(ブランドメーカー出荷金額ベース)と拡大した。2013年度に主要ブランドの低迷などにより一時成長率が鈍化したが、2014年度以降、拡大基調にある。この背景にはドクターズコスメの肌トラブルを改善に導く、あるいは悪化を防ぐという基本的な特性に加え、一般化粧品でも消費者ニーズの高いエイジングケアや美白などの機能性を付加した製品の投入が大きな要因であるものとみる。またドラッグストアや百貨店などで取扱のあるブランドに関しては、インバウンド(訪日外国人客)需要の取り込みによる寄与もあったものと考えるとしている。
製品カテゴリーとしては、スキンケア製品が全体市場の大勢を占めており、主力製品であることに変わりはないが、メイクアップやヘアケア、ボディケア製品の品揃えを強化する動きも徐々に強まっている。またチャネル別でみると、概して通信販売が好調であるほか、ドラッグストアやバラエティストアなどの一般品流通、医療施設などの医家向け流通といったいずれのチャネルにおいても、前年度を上回る好調ぶりを示した。
2016年度の国内ドクターズコスメ市場規模は、前年度比102.0%の917億円(ブランドメーカー出荷金額ベース)を見込む。スキンケア製品を中心としたドクターズコスメは、肌トラブルのある人や、敏感肌や乾燥肌などに悩む人にとって必要な製品である一方、エイジングケアや美白といった機能強化が進んでいることなどから堅調な動きがつづくものとみる。また、一般的に敏感肌を自覚する女性が増えているといわれるなか、ドクターズコスメの特性に再び関心が高まっていることに加え、海外でも認知度の高い一部ブランドでは、インバウンド需要を取り込める状況にある。
国内の化粧品市場全体の成長性については今後、大きな成長が見込みにくいことから、ドクターズコスメ市場のみが大きく伸長することは考え難い一方で、肌トラブル改善に加え、消費者ニーズの高い機能性を更にプラスすることで、今後も期待できる市場であるものと考えるとしている。(編集担当:慶尾六郎)