超高齢化社会を受けて、高齢者をターゲットにしたビジネスが加速している。国内コンビニ各社の中で最多店舗数を誇るセブン&アイ・ホールディングスが公開している投資家向けの資料を見てみると、2010年頃までは30代までの客が半数以上を占めていたが、その比率が徐々に減少し、今では40代から50代の利用者が6割以上を占めていることが分かる。それに伴い、店内に陳列している商品構成も高齢者層を意識したものにシフトしつつある。ボリューム重視の弁当が少なくなり、高級志向や健康志向、惣菜などに力を入れているのは、一人暮らしの若者向けではなく、都市部の高齢者層をターゲットにしているためだ。また、高齢者向けの宅配サービスも好調のようだ。
みずほ銀行によると、65歳以上高齢者の消費市場は、2025年には100兆円規模に拡大するという見通しを立てており、「医療・医薬」「介護」「生活産業」の3つの事業分野において高齢者向け市場はこれからも益々拡大していくと思われる。コンビニ以外の業界でも当然、需要獲得のためシニアビジネスに拍車がかかっている。
携帯電話業界でシニア向け製品の開発に力を入れているのが富士通だ。同社は2001年に「らくらくホンⅡ」を発売して以来、ほぼ毎年新モデルを発売。大きくて見やすいキー、画面に数字が表示されるワンタッチダイヤル、相手の声が聞き取りやすい「はっきりボイス」など、機械操作が苦手なシニア世代でも使いやすい機能を追求して人気を博し、2011年には累計販売数が2000万台を突破している。12年には他社に先駆けて「らくらくスマートフォン」の販売も開始し、こちらも好評だ。
化粧品業界では、資生堂も50代以降をターゲットにしたコスメシリーズ「プリオール」を発売し、順調に売り上げを伸ばしている。プリオールは「大人の七難すんなり解決」をキャッチコピーに、スキンケア・ベースメーキャップ・ポイントメーキャップ・ヘアケアのラインナップで展開するブランドで、ドラッグストアなどの市販品のみならず、美容室などプロ向けのヘアカラーとしても支持されている資生堂が力を入れている商品だけに、評価も上々で、今後の展開も期待されている。
健康食品の分野では、ハチミツやローヤルゼリー、プロポリスなど、国内ミツバチ産品のトップブランドである山田養蜂場が、同社人気No1商品である栄養機能食品「酵素分解ローヤルゼリーキング」を、粒が飲み込みにくい高齢者でも飲みやすいように顆粒タイプにした「酵素分解ローヤルゼリーキング 顆粒」を11月に新発売している。この商品は、同社に寄せられた「喉が細くなり粒が飲めなくなった」「粒が大きいので、砕いたり、すり潰してもよいか」などの消費者の声を反映したものだ。しかし、ローヤルゼリーの風味はとても独特で、粉末状にしただけでは飲みづらく、また、タンパク質が豊富で、非常にデリケートな素材でもあることから、飲みやすさと品質を両立させるため、技術開発は難航したという。約100回に及ぶ試作検討を繰り返し、有用成分はそのままに、飲みやすいヨーグルト風味の顆粒に仕上げることができたそうだ。
人は誰しも歳をとる。それは避けられないことだ。しかし、いくら歳をとっても、健康的に若々しく暮らしたい。もちろん、便利さや快適さも重要だが、売れ筋のシニア商品を見てみると、そういった要望をかなえる物に支持が集まっているように思える。(編集担当:藤原伊織)