2016年12月20日、総務省消防庁が『2016年版消防白書』を公開。その中で15年は全国の救急車の出動件数は初めて600万件を突破し、6年連続で過去最多を記録したと発表。特に高齢者が多く、65歳以上の割合が56.7%に昇った。10年前と比較すると1割増加しており、高齢化が救急者出動の件数引き上げに影響を与えている。
また傷病の程度は「入院不要の軽症」が49.4%と最も多く、救急車が病院まで行かなかった「不搬送」の割合は全体の12%。救急車がタクシー代わりに呼ばれるケースも少なくない。件数が増加する中で不急の事案に対応することによって、本当に急を要する事案への対応が遅れることも懸念されており、消防庁では利用実態を調査する方針を固めた。
今年度から統計を見直し、「無料であること」「医療機関で優先的に診てもらう」「何処に診てもらえばよいのかわからない」「軽いけが」といった理由で要請があった場合は「必要性が低い」と位置づけて集計。調査結果に基づいて不急な出動を減らし、救急車の効率的な運用を目指す。
こうした状況から救急車有料化を求める声も上がっている。15年には国の財政制度審議会が救急車を有料化するよう財務省に提言した。医師の86%が救急車の有料化について検討をすべきだという調査結果もある。それほど救急車のタクシー代わり利用は深刻となっているのだ。
消防庁では「救急相談センター」(#7119)を設置している。医師や看護師が24時間待機しており、救急車を呼ぶべきかどうか判断に迷ったら助言している他、ホームページで「救急受診ガイド」を公開し、簡易診断を行うことができ、救急車を呼ぶべきかどうかセルフチェックができる。
救急車が有料化したり、到着が遅れたりして困るのは誰でもない救急患者本人である。タクシー代わりの利用は自分たちの首を締めていることを自覚し、まず判断に迷ったときには救急相談センターや救急受診ガイドを利用して欲しい。(編集担当:久保田雄城)