【今週の展望】25日移動平均線と「雲」の防衛力が試される

2017年02月19日 20:29

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チャート上に描かれるテクニカル指標でおなじみな存在が、25日移動平均線と、日足一目均衡表の「雲」。今週はその両者のサポート力がストレステストにかけられる。

 2月6日~10日の投資主体別株式売買動向は、外国人は1371億円の4週ぶりの買い越し、個人は1754億円の2週ぶりの売り越し、信託銀行は393億円の2週連続の売り越し。週間騰落が549円安から460円高に変わったので、外国人、個人の売り越しと買い越しが逆転した。

 前週5日間のカラ売り比率は、13日が34.5%、14日が38.8%、15日が35.8%、16日が38.7%、17日が38.8%。終値がプラスの日は36%未満、マイナスの日は38%超えというわかりやすい数字。日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)の17日終値は17.37で、10日終値の18.53から1.16ポイント下落し、前週は一度も18を超えなかった。カラ売り比率が40%を一度も超えなかったことと合わせて、前週はNYダウが連騰して世界的にリスクオフの度合いが小さかったことを示している。しかし東京市場は為替の円高の傾向が治らないためにそれに取り残され、「世界の陰極」になっていた。

 さて、前週末17日のヨーロッパ市場はまちまち。英国の1月の小売売上高指数は前月比-0.3%で予想外のマイナス。インフレで市民の間に買い控えが起きている。しかしロンドンFTSE100指数はプラス。フランス大統領選挙はルペン候補にも疑惑が浮上してユーロが売られ、フランス、ドイツの株価はマイナスだった。

 NYダウは4.28ドル高で7営業日続伸。NASDAQ、S&P500も小幅反発した。CB景気先行総合指数は前月比+0.6%の125.5と悪くなかったが、トランプ大統領の就任後初の単独記者会見で減税や財政出動への言及がなく失望を買ってエネルギーセクターを中心にザラ場ずっとマイナス。20日が「プレジデンツ・デー」の祝日休場で、6連騰したため3連休前に利益確定売りかと思いきや、取引終了直前にわざとらしくプラスに滑り込み7日連続史上最高値の記録更新中。しかしアメリカの長期金利が低下しNY時間の為替レートはドル円が112円台後半、ユーロ円が119円台後半と円高進行で、大阪夜間取引終値は19140円。CME先物清算値は19130円と安かった。

 2月になってから、日経平均は19500円、TOPIXは1560、ドル円レートは115円という上値の「壁」を乗り越えられない。しかも「円安は全てを癒し、円高は全てをさいなむ」という為替と株価指数の相関が強くなっているので、ドル円が112円台では経済指標や要人発言や上海市場の異変など、何かをきっかけにドル円112円、日経平均19000円を割り込む恐れが高まる。しかも東京株式市場にとって「正義の味方」だった日銀のETF買いは2月になって急に冷たくなり、前場で条件を満たしていながら4回も裏切られ、「下げても日銀がいる」と、頼りにはできなくなった。かくして、2万ドルを超えても7連騰し連日史上最高値更新のNYダウと全く対照的に、東京市場はドル安円高にさいなまれ「世界の陰極」と化している。

 今週は決算発表がほとんど終了し、経済指標もイベントも少なく、頼りになるのは「売られすぎ」と判断されたら買いが入るテクニカル指標になるとみる。「防衛線」としてその能力が試されそうなのは、17日時点で19116円の25日移動平均線と、その4円下の19112円の日足一目均衡表の「雲の上限」の2つだ。どちらもチャートではおなじみのポピュラーなテクニカル指標で、現在値よりも下であれば下値支持線(サポートライン)の役割をしっかり果たすと期待されている。この2本も下に突破されたら、あとは2月は終値で一度も下に抜けていない18900円がサポートラインになるだろう。その時のドル円は111円台か? 110円台か? 可能性は低いと思われるが、前週、東芝にしてもトランプ政権にしても「一寸先は闇」の怖さを見せつけられた記憶が新しいので、下値のメドは18900円とみる。19110円付近で止まったら、25日線と「雲の上限」のストレステストは合格で、改めてその能力が認められる。

 一方、上値のほうは強気になれない。2月の上値の壁は19500円だが、それに接近した時のドル円レートは114円台で、113円台なら19400円接近が関の山。為替との相関が強い地合いなので、今週はドル円114円、日経平均19400円が精いっぱいと予測する。

 ということで、今週の日経平均終値の予想変動レンジは18900~19400円とみる。

 前週は東京に「春一番」が吹いたが、トランプ政権や為替や東芝に振り回され寒風吹きすさぶ東京市場も、3月になれば春の気配が少しは漂ってくるだろう。3月期末の配当狙い、優待狙いの個人投資家お楽しみの権利確定イベントに向けた動きが出て、業績、配当の上方修正発表、好業績や増配の観測記事、「自社株買い実施」のニュースなども景気づけになる。上場日が決まっているものだけで14件ある東京市場「春のIPOまつり」も、投資家心理に刺激のプレゼント実施中、となるか? 冬来たりなば、春遠からじ。