日銀の金融緩和期待が持続し円安基調、先物主導で日経平均9000円から離れず

2012年10月27日 11:00

今週の振り返り、「つくられた7連騰」が途切れても強い相場

 東証1部売買代金が1兆円を超えたのが2日だけと売買が低調で、NYダウや為替や決算に影響されながら日経平均が9000円台と8900円台を行ったり来たりした今週は「先物主導」の週だった。ソフトバンク <9984> 、ファーストリテイリング <9983> 、ファナック <6954> の「日経平均寄与度御三家」を集中的に売買すれば日経平均をコントロールでき、先物で甘い汁が吸えるという海外投機筋の策略が成功。TOPIXがマイナスでも、値上がり銘柄より値下がり銘柄のほうが多くても日経平均はプラスという現象が頻発した。それでも日銀が30日の金融政策決定会合で追加金融緩和に踏み切る期待が持続し、大きく下げても9000円近辺までリバウンドする局面がある強い相場が連日続いた。

 19日のNYダウ205ドル安を受けて22日の日経平均は9000円を割る売り先行で始まり、一時は8900円を割り込んだ。しかし、日銀の追加緩和期待で円安に振れたのを材料に、投機筋が強引なショートスクイーズ(踏み上げ)のポジションを仕掛けて先物が上昇。これが買い気を誘ってトヨタ <7203>、ホンダ <7267> などの自動車、建設、不動産、金融中心に上がり9000円台に戻った。終値は9010.71円で8.03円高だが、TOPIXはマイナス0.67。主役は業績予想を上方修正したオリエンタルランド <4661> で、シャープ <6753> も買われた。先週好調だったファナック、コマツ <6301> 、安川電機 <6506> 、アマダ <6113> など機械株や関西電力 <9503> 、中部電力 <9502> 、三菱商事 <8058> 、海運、鉄鋼などは下げたが、値上がり銘柄と値下がり銘柄は全く同数の733で、まさに高安まちまちだった。

 23日は前日と反対に前場が高く、後場に下げる展開。この日も7月以来の1ドル=80円台タッチを材料に投機筋が先物のショートスクイーズを仕掛けて日経平均は9075円まで上がったが、長続きせず、後場は円安の一服と高値警戒感で弱含みに転じた。業績上方修正の富士重工 <7270> など自動車、同じく業績上方修正のカゴメ <2811> など食品、セブン&アイHD <3382> など小売、機械、ゴムは買われたが、保険、銀行、石油、鉄鋼が下がり、今期無配が報じられた関西電力は急落した。値下がり銘柄が1031で値上がり銘柄474の2倍以上あり、TOPIXはマイナス4.35だったのに、日経平均終値はファナックの240円高(寄与度+10円)やファーストリテイリング、京セラ <6971> が買われたのが効いて9014.25円で3.54円高という、まさに「つくられた7連騰」になった。

 しかし24日は8連騰ならず。日経平均終値は一時は8900円を割り込み、8954.30円・59.95円安で引けた。NYダウの下落が243ドルで、前日に高値警戒感による利益確定売りが出た日本株の下落は十分予想されたが、投機筋は今日も元気。後場いきなり先物にまとまった買いが入り日経平均が前日比プラスまで吊り上がる場面が見られた。セクター別ではJAL <9201> など空運、コジマ <7513> など小売、金属製品、精密に買われる銘柄がみられたが、ホンダ、日産 <7201> など自動車や鉄鋼、機械、鉱業、海運、証券が軒並み安くなった。シャープにホンハイがらみの思惑買いが入る一方、アップルの決算を前にソフトバンク、東芝 <6502> などアップル関連銘柄が売られ、地方電力株もさえなかった。

 25日は手がかり難による小動きで始まり、アジア市場も下落したため前場は一進一退だったが、後場の午後2時過ぎ、にわかに堅調に変わった。日経新聞が「追加金融緩和は10兆円規模」と電子版で報じたことで、為替が1ドル=80円台に乗せ、JFEなど鉄鋼、トヨタ、ホンダ、日産など自動車、キヤノン <7751> など精密といった輸出関連株、主力株中心に全面高の展開になった。日本橋梁 <5912> 、日特建設 <1929> など建設・復興関連も買われ、33業種では石油・石炭とガラス・土石の2業種だけが下落した。この日の主役は決算発表が好調だったKDDI <9433> で年初来高値を更新したが、ソフトバンクは下げた。日経平均終値は約1ヵ月ぶりの高値の9055.20円で、上昇幅は100.90円。値上がり銘柄は1241、値下がり銘柄は294で、先物主導が続いた中、久々に「現物が買われ平均株価が上昇した日」になった。

 週末の26日は日経平均寄与度御三家のファナックの決算が市場予測を超える悪さで影響が懸念されたが、前場はまずまずの展開で日経平均が前日比プラスに転じる場面も多かった。しかし後場は全面安で、33業種中、上がったのは全日空 <9202> など空運とその他金融の2業種しかなかった。日経平均は9000円を割り122.14円安の安値引け、8933.06円で今週の取引を終えた。下落が大きいのは関西電力や中部電力など電力・ガスと非鉄金属、鉱業で、400円安のファナックなど機械も、業績予想を下方修正したキヤノンなど精密も、自動車も電機も海運も売られた。前日の主役KDDIも90円安だった。後場に下げたのは週末の利益確定売り、アジア市場の軟調に加え、今週前半に先物買いで日経平均を支えた投機筋が逆に先物売りを仕掛けてきた。最後まで先物主導の週だったが、派手に動いたわりには先週末と比べた日経平均終値の変動幅は69.62円安にとどまった

来週の展望、日銀だけでなく経済指標からも目が離せない

 来週の焦点は何と言っても10月30日の日銀の金融政策決定会合だろう。市場では追加金融緩和の期待が高まっており、産経新聞で資産買入等基金の国債買い入れ枠20兆円増という数字も出たが、日経新聞の10兆円増が穏当なところ。それを上回って2月14日のようなサプライズを起こせるか? 1ドル=80円台の円安傾向が持続すれば、海外からのリスクオン資金の流入が持続して日経平均は9000円前後をキープできるだろう。ただ、不安要素は国内大手企業の決算発表で、業績予想の下方修正がゾロゾロ出てきたら下押し圧力がかかりそうだ。29日にはホンダ、30日にはコマツ、日立、31日はパナソニック、京セラ、ソフトバンク、11月1日にはソニー、シャープの決算発表があり、2日にはファーストリテイリングの10月の既存店売上高の発表がある。

 国内外の経済指標の発表も多いので、日銀だけでなくこちらにも注意を向けたい。29日の商業販売統計、30日の鉱工業生産指数、完全失業率、有効求人倍率、31日の住宅着工戸数は要チェック。アメリカでは29日に個人所得・消費支出、30日には消費者信頼感指数、S&Pケースシラー住宅価格指数、11月1日にはISM製造業景気指数が出る。QE3による住宅の活況が全体の景気にどう波及するか注目。1日は中国でも製造業PMIなどの発表があり、「底入れ」が確認されれば日本株にも好影響をもたらすだろう。11月2日に出るアメリカの雇用統計のインパクトは大きいが、東京市場では金曜日の大引け後になる。6日の投票日への影響は、9月の失業率7.8%より数字が多ければロムニー候補有利、少なければオバマ大統領有利と見られているが、市場予測は横ばいかやや好転となっている。(編集担当:寺尾淳)