昨年、iPhon5、iPad miniなどをヒットさせた米アップル社の勢いが、今年に入って急激に鈍化しているようだ。iPhon5の需要が予想を下回っているとして、アップルが部品の発注量を当初計画より削減したと米の有力メディアも報じている。実際にiPhon5発売当初は700ドルを超えていたアップルの株価も今年に入って一時500ドルを割り込むまで下落したことからも、先行きを不安視する声が次第に大きくなってきた。
日本ではiPhone5をはじめとするiOS(アップル社製)のスマートフォンが6割以上のシェアを占有しており、国内でのスマートフォンの爆発的な普及に大きく貢献した。しかし、世界に目を向けてみると、アップル社のお膝元でもあるアメリカでは、アンドロイド陣営をわずかにリードしているが、ヨーロッパや日本を覗くアジア地域では、サムソンをはじめとするアンドロイド陣営が圧倒的に優位な立場に立っている。
その最大の原因は、やはり価格にあるだろう。iPhoneは、競合他社のスマートフォンに比べると高価なことに加え、ここ最近は中国の電子メーカーなどの比較的低価格のスマートフォンが高スペック化し、世界市場における競争力を高めつつあるからだ。東南アジアなど若者人口が多い新興国では、このような中国ブランドの低価格なスマホが人気で、iPhoneを選ぶのは比較的裕福な層に限られているようだ。
アップルとしてはこのようなポテンシャルの高いアジアのマーケットを無策のまま放置しておく訳にはいかないだろう。ライバルでもある世界シェアトップの韓国サムスンや、ブランド力を取り戻しつつあるソニー やシャープ といった日本メーカー、さらには成長著しいファーウェイ、ZTE、Lenovoといった中国メーカーなど、束になって攻勢をかけてくるグーグルのアンドロイドという武器を持ったアジア発のスマホメーカーに対抗していくためには、もうリンゴマークの持つブランド力だけでは、通用しなくなっているからである。
そんな中、ここ最近になってアップルは、アジア最大の市場である中国でのビジネス展開に積極的な姿勢を見せ始めている。同社CEOのティム・クックも、アップルにとって中国市場は極めて重要だと公式に発言している。さらに、今夏までに上海市内にアップルとして中国初の研究開発拠点を設置し、中国語機能を強化した上で価格を抑える中国向けiPhoneを現地開発する計画を進めていると報じられた。廉価版iPhoneの価格は2千元(約3万円)前後となる見込みと、中国紙、第一財経日報が上海市当局筋の情報として伝えている。
中国では、比較的アップル製品の人気は根強いと言われてきた。しかしここ最近は、iPhoneの半額以下で購入できるコストパフォーマンスの高いスマホを展開する中国メーカーにシェアを急速に浸食されている。ウェイトが大きい中国市場だけに、今後の中国でのビジネス展開次第では、アップル全体の売上にも大きな影響をもたらすことになるだろう。世界のスマートフォン市場におけるアンドロイド陣営の独走をこのまま許してしまうのか、それとも時価総額世界一に返り咲き、再び輝きを取り戻すか、アップル社の今後の命運を左右する鍵のひとつは中国市場が握っていることは確かのようだ。(編集担当:北尾準)