テロ等準備罪処罰法が11日施行されたが、菅義偉官房長官は同日の記者会見で、法案審議中に国連人権理事会から任命されたジョセフ・カナタチ国連特別報告者から指摘された懸念や指摘事項について「外務省で内容を精査するとともに具体的対応を検討している」と答え、書簡を受け取り丸1カ月以上経過して、施行日を迎えた今日に至っても回答できないままになっていることが明らかになった。
菅官房長官は会見で記者団の質問に「カナタチ氏からの書簡に対し、我が国の立場を追ってしっかりと正式に回答したいと思っている」と語った。ただ、国連常任理事国入りを目指す日本が、国連人権理事会から任命されたカナタチ氏の書簡に、このような対応をしていては、お寒い限りとしか言いようがない、との声もある。
カナタチ氏は書簡の中で「プライバシーに関する権利およびその他の基本的な国民の自由の行使に影響を及ぼすという深刻な懸念がある」と指摘。「とりわけ私は、何が『計画』や『準備行為』を構成するのか、という点について曖昧な定義になっていること、および法案別表は明らかにテロリズムや組織犯罪とは無関係な過度に広範な犯罪を含んでいるために、法が恣意的に適用される危険を懸念する」としている。
また「現時点の法案の分析によれば、新法に抵触する行為の存在を明らかにするためには監視を増強することになる中にあって、適切なプライバシー保護策を新たに導入する具体的条文や規定が新法やこれに付随する措置にはないと考えられる」
「国家安全保障を目的として行われる監視活動の実施を事前に許可するための独立した第三者機関を法令に基づき設置することも想定されていない」ことも指摘した。
そのうえで「日本が1978年に批准した自由権規約(ICCPR)17条1項は個人のプライバシーと通信に関する恣意的または違法な干渉から保護される権利を認め、誰もがそのような干渉から保護される権利を有することを規定している。また、国連総会決議(A/RES/71/199)では『公共の安全に関する懸念は、機密情報の収集と保護を正当化するかもしれないが、国家は、国際人権法に基づいて負う義務の完全な履行を確保しなければならない』とされている。国際人権法の規範および基準と(テロ等準備罪と)の整合性に関して情報を提供してください」など、懸念に対する指摘とこれらの懸念をクリアし担保するものを示すよう日本政府に求めていた。国民にとっても、懸念払しょくにつながる回答かどうか、注視すべきものだ。(編集担当:森高龍二)