今、「宅配ボックス」への注目が高まってる。国土交通省の調査によると、2016年度の宅配便取扱個数は40億1861万個となり、前年度の37億4493万個をはるかに上回る伸びとなった。
アマゾンや楽天などの通販サイトに代表されるインターネット販売を利用する消費者が増加していることや、インターネットでの売買に抵抗が薄れたことで個人や小規模の販売サイト、オークションサイトなどの個人間の売買も活発になっていることなどが原因とみられる。経済産業省の調査によると、16年の消費者向け電子商取引の市場規模は15.1兆円。17年度以降もさらに増加する見込みだ。
取引が活発に行われるのは日本経済のためにも歓迎すべきことだが、それを「運ぶ」側の労働負荷が社会問題になりつつある。運ぶべき荷物の数が急増していることに加え、それを運ぶトラックドライバーの人手不足、さらには再配達問題。都市部のマンションなどではとくに、受取人が不在であることが多く、国交省の調べではなんと2割弱もの荷物が再配達となっているというのだ。2016年度の取扱個数で考えると、単純計算で8億個近くの荷物が再配達されていることになる。
この状況を受け、ヤマトホールディングス傘下で配達業者最大手のヤマト運輸が「当日の再配達の締切時刻の変更」及び「配達時間帯の指定枠の変更」を行った。しかも、将来的には再配達の有料化も検討していると発表したことで、同社に限らず業界全体で近い将来、宅配便の再配達は有料化される見通しが高くなったといえるだろう。
こうした流れの中で脚光を浴びているのが「宅配ボックス」だ。都市部の分譲マンションなどでは以前から、宅配ボックスは定番仕様となっているものの、一戸建ての住宅や賃貸マンションなどでは普及率は低い。楽天などの大手ECサイトではコンビニ受け取りなどのサービスを提供しているものの、個人間のやり取りなどでは使えないし、たとえ使えるようになっても、受け取りに行くのも面倒だ。取扱量が増加し続けると、コンビニ側の負担も大きくなり、別の問題も出てくるだろう。
1992年から、戸建て住宅向けの宅配ボックス「COMBO(コンボ)」シリーズを販売しているパナソニックが、2016年12月から17年3月までの期間、福井県あわら市と共同で、市内の戸建て住宅に住まう100世帯をモニターに「コンボ」を設置する実証実験を行ったところ、再配達率が設置前の約49%から設置後、約8%に減小している。
また、発売から20年以上、消費者からの反応は薄く、商品の認知度も低かった「コンボ」が今、大きな話題を呼んでおり、今年4月初めに予定していた新シリーズの注文が殺到したことで、発売時期を6月に延期する騒ぎとなっている。
住宅業者もこの「宅配ボックス」に注目し始めている。木造住宅メーカーのアキュラホームでは、同社が全国に展開する展示場78ヶ所中27ヶ所のモデルハウスで宅配ボックスを設置して提案を行っており、同社のグループ会社であるオカザキホームでも、9月下旬に岡崎市井内町と東海市荒尾町で2邸同時にグランドオープンするコンセプトモデルハウスでも、積極的に宅配ボックスを勧めていくという。
運ぶ側にとっても受け取る側にとってもメリットの大きい宅配ボックス。新築住宅だけに限らず、すでに住んでいる住宅でも、門柱などに設置できるタイプや簡単なリフォームで設置できるタイプもあるので、留守がちの家はとくに、検討してみる価値はあるのではないだろうか。(編集担当:松田渡)