雇用改善は若者減少が主因 伍賀金沢大名誉教授

2017年10月20日 06:16

 岡田知弘京大教授ら約80人で構成する福祉国家構想研究会メンバーの伍賀一道金沢大学名誉教授が18日、研究会ブログにデータ分析から「若者の就職、正社員求人など雇用改善は安倍政権の成果でなく若年人口減少が主因」との背景を発表した。

 それによると、自民党の選挙公約で「2012年から16年までの4年間で就業者数は185万人増えた」としているがデータの出典は示されていない。一方、総務省の「労働力調査」によれば、就業者はこの間に169万人増えている。このうち「役員を除く雇用者」(労働者)は就業者を上回って、218万人増えた。就業者のなかの自営業者(個人経営の工場主、商店主、農家など)やその家族従業者の減少が大きい(計68万人の減)。増加した労働者(218万人)の9割以上は非正規労働者(203万人)が占めている。つまり、この4年で正社員が増えたのは15万にとどまっている」と指摘する。

 増えた正社員15万人の内容では「男性に限れば22万人減で、団塊世代が定年後、非正規雇用に移行した影響が大きい」とし、あわせて「女性正社員は医療・介護分野を中心に37万人増えた」。「女性正社員の年間収入は200万円未満が全体の20.3%、300万円未満になると47.7%になる」と賃金の低さを示した。

 伍賀名誉教授は「非正規労働者の4分の3は年収200万円未満(2016年労働力調査)。このため女性正社員や非正規雇用の増加は低所得層の増加を意味している」と指摘する。

 有効求人倍率についても「8月の常用労働者(パートを含む)有効求人件数が10万人を超える職業について、有効求人倍率の高いところに位置するのは、接客・給仕、飲食物調理、介護サービス、自動車運転、商品販売などで、労働時間は長く、不規則・深夜勤務が多いにもかかわらず賃金は低いことがあり、離職率が高いため、企業は就職者が得られても、早期の離職をみこし、ハローワークに求人を出し続けるため、有効求人倍率は高止まり状態が続いている」と背景を分析。「人手不足をもたらしている要因には働かせ方の問題が大きい」とも提起している。

 一般事務職への就職希望者が約43万人あるが、この職種の求人は約15万人で、有効求人倍率は0.34に留まっている。

 新規学卒者(高卒、大卒)の就職状況が好調なのも安倍政権の成果ではなく、最大要因は若年人口の減少にあると伍賀名誉教授は指摘。

 2005年から15年までの10年間で、15歳~24歳人口は200万人、25~34歳層は446万人減。他方、65歳以上の高齢者は824万人増えている。労働市場から引退あるいは非正規労働者に転じた高齢者の代わりとなるだけの若者の人数がはるかに少ないため若者の採用をめざす企業間競争が激しくなるのは当たり前と指摘した。(編集担当:森高龍二)