NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションと実践女子大学人間社会学部准教授斎藤明(以下、斎藤明研究室)は、NTTコムオンラインが運営する「NTTコム リサーチ」の登録モニターのうち、就業経験はあるが現在働いてない再就職希望の女性、および企業の採用担当者の方を対象に、就業希望側と雇用側での意識格差に関する現状や再就職に向けた学習について調査を実施した。
就業経験があり現在未就業だが今後働きたい女性にとって、一番の再就職への妨げとなっているのは「子育て」(50.7%)で、子供と仕事の両立についての不安を感じている傾向がみられた。第2位は「働きたいが仕事がない」(29.6%)、「働くためのスキルがない」(15.5%)等の理由が続いた。これらはいずれも自身のスキル不足を認識する事に起因している事が予想される。
ビジネスにおけるスキルについて、就業希望の女性側は事務職の人気などもあり「パソコン操作」「外国語」などを学びたい意欲があるが、企業側は「コミュニケーション能力」や「ビジネスマナー」「プレゼンテーション能力」などの対人スキルや「データをまとめるスキル」「人事、労務関連」「経理、財務関連」を求める傾向にあり、再就職希望の女性の学習意向スキルと、雇用側企業が求めるスキルとの間でミスマッチが生じている事が考えられる。
企業側は正社員を採用したい意向が高く、社員に対しては「行動特性や業務の遂行能力」として、「自己成熟性」や「組織・チームワーク力」「対人・営業活動スキル」なども求めていることから、再就職を希望する場合、それらの企業ニーズに対応した能力のスキルアップについても考慮すべきであることが推察される。
また、正社員は非正規社員よりも、「自己成熟性」「変化行動・意思決定スキル」「戦略・思考力」「リーダースキル」を求められている割合が高いことが分かる。不足スキルと今後学びたいスキルについての数値の差をみると、「コミュニケーション能力」や「ビジネスマナー」「プレゼンテーション能力」などの項目についても、不足スキルと今後学びたいスキルの間に数値差が大きい傾向があり、能力不足を感じているものの、学習意欲が上がりづらいようだ。
子育て・介護をしながら働く女性に対する企業側のサポート制度としては「勤務時間の短縮制度」(64.4%)が最も高く、「休暇取得制度」(50.6%)、「遅刻、早退の許可」(41.3%)と続き、就業環境に関しては、女性の半数は自宅にいながらSOHO形式での就業を希望しているものの、企業側の導入意向は、「既に導入済み」(4.4%)、「この先検討予定」(20.0%)を合わせて24.0%程度にとどまり、大半の企業が予定はなく、両者間でニーズが釣り合っていない状況が伺える。
一般に高い対人スキルが必要とされないイメージのある事務職などが近年人気だが、実際には事務職で成果を上げる仕事を行っていくには高い対人スキルが求められる。対人スキルは性格特性と完全に切り離せない問題であるうえ、一朝一夕で身につくものではない。いずれにせよ、職業人は主体性が求められる。主体性を求めた結果、それが特殊業務の習得だったり対人スキルの向上であったりする。主体的な姿勢が重要と言えそうだ。(編集担当:久保田雄城)