学校法人加計学園獣医学部新設に対し、10日にも文部科学省の大学設置・学校法人審議会(大学設置審)が「認可」の答申を林芳正文部科学大臣に答申する流れになってきた。
国民は設置審が来年4月開校を認める答申を行うことに違和感を持たないだろうか。疑惑に包まれたキャンパスに学ぶ学生は不幸だ。そうした学生をつくらないためにも、獣医学部設置に至る経緯の不透明さや疑惑は払拭のうえ、「認可するかどうか」林大臣は答申を受けたうえでも、1年先送りも視野に、自らの判断と責任において決めることが大事。
獣医学部新設を巡っては安倍晋三総理が議長を務める国家戦略特区で一校に限り認めるとする決定が行われたが、加計学園に決まる過程で「総理官邸の最高レベルが言っている」「総理の御意向」「2018年4月開校」とおしりを切っての認可条件など、不可解な文書が見つかり、文部科学行政事務方トップの前文部科学事務次官、前川喜平氏が「行政が歪められた」とはっきり証言している。見逃せない問題部分が未解決のまま。
加計学園に決定する経緯の不透明さ、官邸による関与があったのかどうか、全くクリアになっていない。
さらに、校舎建設が進む愛媛県今治市では加計学園校舎建設費の単価やバイオハザードに対するリスクなどを評価するため、10月から専門委員らが取り組みを始めたばかり。来年4月開校を実現しなければならない事情が行政にあるのか、そこも気になる。
今月1日、森友学園問題(国有地を8億円値引きし売却した問題で会計検査院は最大6億円が過大値引きされた可能性を試算したとする報道もある)とともに、加計学園疑惑を追求している黒川敦彦氏らは大学設置審会長や林文科大臣らに「今治市での専門委の審査結果が出て、市民に広く説明されてから、大学設置審の是非は決定されるべきだ」との意見書を提出し、それまでに認可の是非を出すのは不適当だと要請している。
少なくとも、先の国会で野党側が政府側に求めた問いに対する回答、あわせて、今治市の専門委員の審査結果を踏まえ、疑惑やバイオハザードへの懸念を払拭したうえで、林文科大臣は責任ある判断をするとともに、決定後は決定に至る客観的資料を公にし、国民が納得できる説明をすることが必要。
こうした手順がなければ『行政が歪められた』とする主張を覆すことはできない。2015年に閣議決定した獣医学部を創設するための4条件に関しても、国会議論で、何一つ、政府は具体的条件についてクリアしている客観的資料を国民に示してはいない。
自公は小選挙区制のもとで多数議席を得たが、「モリカケ問題」においては安倍政権への不信感に選挙前と変わるところはない。安倍政権はこの事実を踏まえ「客観的資料に基づき、国民に対して丁寧な説明をすること」が必要。獣医師を目指す学生のためにも、疑惑解消が先決。(編集担当:森高龍二)