2017年における日本の貿易収支は2年連続で黒字となった。その主な要因となっているのが、アジア向けの電子製品やアメリカ向けの自動車だ。輸出が増えるということは、それだけ他の国も日本からの輸出品に対してのニーズがあるということだが、その背景には世界的な好景気という点も大きく関係している。景気が拡大しているのは決して日本だけというわけではないが、輸出が伸びることで国内生産も拡大しさらに景気の好転につながる可能性がある。
日本の輸出の中でも特に堅調な伸びを示しているのは半導体関連製品である。スマートフォンは今や日本のみならず世界的にも普及が進んでいるが、半導体はこうした情報機器に不可欠な部品であることから、輸出が伸びている。中でもスマートフォンの普及が進む中国ではこうした半導体をはじめとする電子機器の需要が伸びており、輸出額についてもおよそ14兆円となった。中国以外のアジア向けの輸出額についても全体でおよそ42兆円となっており、これはいずれの金額も過去最大の数値となっている。
また、電子製品以外では自動車関連製品の輸出額も増えている。自動車やその関連製品の輸出先は主にアメリカで、こちらはおよそ15兆円と電子製品と比較するとやや金額は少ないもののそれでもこの分野では2年ぶりの増加である。こうした自動車関連製品の輸出増により、アメリカ向けの貿易黒字はおよそ7兆円という結果となった。この点は、アメリカも日本と同様に景気が拡大していることから自動車などの需要が増えたことが関係しているといえるだろう。
ただし、この貿易収支については手放しで喜ぶべき部分ばかりでもない。輸出が増えた反面、日本の輸入高についても増えている。その理由は、原油高によるコストアップだ。2017年は原油の輸入価格が前年比3割ほど上昇しており、輸入高全体でみても3年ぶりに増加している。こうした原油高については2018年も継続するのではないかとの見通しもあり、貿易収支への影響が懸念されている。
貿易における懸念材料はそれだけではない。対アメリカの貿易黒字が拡大しているのは先ほどの説明のとおりだが、それを受けてトランプ政権が対日貿易についての圧力を高める可能性もある。中国やアジア諸国への輸出についても、いつまでも景気拡大が続くということはなく、縮小に転じることによる影響も無いとは言い切れない。2017年は貿易黒字で終了したものの、決して予断を許さない状況が続くことに変わりはない。(編集担当:久保田雄城)