富士キメラ総研がまとめた「2017 LED関連市場総調査」報告書によると、LEDパッケージ世界市場は2025年に2015年比2.0倍6089億個、同8.7%増の1兆9718億円と見込まれている。LEDの需要は拡大しているものの、中国や台湾の安価な製品の台頭で低価格化が進んでおり、市場全体としては厳しい状況となっている。
そんな中、照明に代わる有望分野としてLED業界で注目されているのが、車載用LEDだ。ここ数年の間だけでも、車に搭載されるLEDの個数は飛躍的に伸びている。
台湾の調査会社・トレンドフォースのLEDインサイド事業が発表した「2016 LED市場需要と供給分析」では、2015年の自動車用外装LEDの世界市場規模は12億1000万ドル(見込み)としている。2020年までの5年間にCAGR 8%で成長を続け、20年には22億9000万ドルに達すると予測していることからみても、車載用LEDは今後LED業界の牽引役として期待できるだろう。
そんな中、2月6日には世界三大液晶パネル製造会社の一つに挙げられる台湾の群創光電社(INNOLUX)について、同社のアクティブマトリクス式ミニLED(AM mini LED)ディスプレイが車載で世界トップクラスの自動車メーカー数社のサプライチェーン入りに成功し、2年後に量産化すると発表して業界の話題となっているが、日本企業はどうだろうか。
車載向け電子部品で世界的にも評価が高いロームも2月20日、業界で初めて、赤色で完全銀レスを実現した耐硫化性向上、高光度LED「SML-Y18U2T」を発表している。同製品は、車載向けのストップランプをはじめとする車載のエクステリア及びインテリア、屋外表示機器、産業機器など、過酷な環境下で使用されるアプリケーションの信頼性向上に貢献するものだ。
自動車や産業機器分野のアプリケーションにおいては、排気ガスなどの環境ストレスにより金属材料が腐食する硫化が経年劣化の主な原因となっているという。信頼性を確保するために硫化対策が必要不可欠となっているが、今回、ロームが開発した製品は、従来銀が使用されていたダイボンディングペースト、フレームに金などの別材料を採用することで、完全銀レス化を実現した。銀腐食が原因で起こるLEDの点灯不具合が解消され、アプリケーションの信頼性を向上させる上、高光度も両立している。同社の実験では、従来品と新製品をそれぞれ240 時間(10 日間)、意図的に劣化を促す硫化試験条件下で使用した場合、従来品は約40%光度が落ちるが、新製品は劣化せず光度を維持できるという。同製品は3月6日(火)~9日(金)に東京ビッグサイトで開催される「LED NEXT STAGE」に展示される予定だ。。
業界的には、車載向けLEDではヘッドライトなどに用いる白色LED分野への期待が膨らんでいるが、既存の分野でも技術力で問題点を解決すれば、まだまだ大きな伸びしろはある。耐硫化性と高光度両立を実現した業界初の赤色LEDは、日本メーカーだけでなく、海外の自動車メーカーや産業機器メーカーなどからも注目を浴びそうだ。(編集担当:藤原伊織)