住宅街活性化を志向するコミュニティ形成の条件を模索するシンポジウム

2018年03月21日 08:11

Symposium Acura

“暮らしを変える「コミュニティ」条件”と題したシンポジウム参加者。左から高田光雄氏、三井所清典氏、二瓶正史氏、齊藤広子氏、川崎直弘氏

 “暮らしを変える「コミュニティ」条件”と題したシンポジウムが、東京都内で開催された。主催したのはアキュラグループやジャーブネットから派生した「これからの住宅地を考える会」で、住宅金融支援機構や公益社団法人都市住宅学会などが後援した。

 大きなテーマは防犯・防災性にすぐれ、しかも美しく、“住んで愉しい住宅地”、あるいは“街”とは、何なのかを探ることにあった。

 少子高齢化が進む現在、人口・世帯数共にピークアウトしていく時代を迎え、地域コミュニティの維持が課題となってきた。そこで今、このシンポジウムが地域のコミュニティが活性化する仕組みが内包された住宅地“街”計画、加えてその活動を支援する方策を探った。つまり、これからも選ばれる住宅地の在り方を探る試みである。MCは、アキュラホーム住生活研究所所長の伊藤圭子氏が担当した。

 参加し登壇したのは、アルセッド建築研究所・代表取締役の三井所清典氏、京都大学名誉教授・京都美術工芸大学工芸学部長の高田光雄氏、市浦ハウジング&プランニング代表取締役の川崎直弘氏、アーバンセクション代表取締役の二瓶正史氏、横花市立大学国際総合科学部教授の齊藤広子氏の5名。

 かつて、「デベロッパーにとって住宅地および住宅は、開発して売ってしまえば終わり、“街空間”を総合的に設計するということが無かった」が、「近年、行政に頼らず、街のセミパブリックゾーンを整備する動きが活発化してきた」という三井所氏の発言を発端にシンポジウムは始まった。

 一方で、川崎氏の「“コミュニティ”という言葉の意味が分かりにくい。これを追及し過ぎると“個”あるいは“私”を失いかねない。コミュニティを活性化させながら個を維持するためには、街のコモンスペースを含めた設計とエリアマネージメントが重要」だとする発言にも行き着く。

 ここで言うコモンスペースを規定するのは、齊藤広子氏の言う「これまでの公民館ではなく、コミュニティハウスや住宅街の歩車融合の路、ポケットパーク、セミパブリックゾーンとしての外構の統一など」としながら、それらを維持管理するために「戸建て住宅街にも分譲マンションのような管理組合法人などを組織して運営すべき」だと言う。その組合マネージメントを支援するのが住宅供給会社で、ゴミ収集後の清掃などは、持ち回りから外注委託するなどの方策を提案すべきだとした。

 住宅街のなかで「家と家が閉じるから、繋がる“中間領域”のある街がこれからの住宅地に必要」とした二瓶氏。加えて、「住民の自主参加型“町内会”から脱皮した住宅管理組合を組織して収益性のあるマネージメントできる街の設計が必要だ」とも。 その例として、住宅の1戸のパーキングスペースは1台分までとし、共用パーキングを全戸数の75%分をつくってレンタルする。つまり、複数台のクルマが必要な家庭は2台目以降、賃貸料を支払うことで、管理組合の収入とする」などを挙げた。

 理想的な「街、つまりコミュニティが目指すは、伝統的な江戸の長屋にある」としたのは高田氏。戦前の東京は持ち家比率25%でしか無かった。江戸の長屋には、共用の(井戸など)コモンスペースがたくさんあり、そこには住民同士の合意やルールがあった。ある意味でそれが街の活気につながっていたとも語った。

 シンポジウムを受けて、アキュラホーム社長・ジャーブネット主宰の宮沢俊哉氏が、「10数年前から“街並み”が大切に思えてきた。“閉じた住宅”から“開いた住居”へ、中間領域を大切にした豊かな暮らしがある住居を」目指すと語った。その回答は、間もなく公開となる、東京・稲城市で開発中の「ヒルサイドテラス若葉台」で示される予定だ。(編集担当:吉田恒)