政府が現在進めている政策のひとつが「働き方改革」である。企業ごとの働き方というものを見直し、生産性を高めるというのがこの政策のテーマだが、厚生労働省ではその働き方改革について、今国会への提出を目指している関連法案を修正する方針を固めた。主な修正内容としては、労働時間の把握を企業が正確に行うことを義務付けるというもので、適切な労務管理を徹底させることを目的とする。
働き方改革は政府だけでなく多くの企業で行われているが、それでもなお長時間労働は多くの企業で行われており、中には過労死という最悪の事態にまで発展するケースも少なくない。そのため、適切な労務管理は厚生労働省のみならず労働者や企業にとっても大きな課題となっていた。今回の法案内容の修正は、こうした課題に対するひとつの対策が盛り込まれることになるだろう。
法案の修正内容としては、長時間勤務をしている従業員が労働安全衛生法に基づいて医師による健康診断を受けることができるように、労働時間の把握など適切な管理を企業に義務付ける規定が追加される。もともと長時間労働は日本の企業における大きな社会問題となっているが、その背景にあるのが管理職や裁量労働制である。管理職の立場にある人は労働基準法で定める労働時間の規制が適用されず、裁量労働制とは残業代を含めた賃金を最初から支払うというもの。こうした様々な要因から従業員の労働時間が曖昧な部分も多かったが、労働時間の把握を企業に義務付けることでより正確な情報を集めることができるようになる。
この裁量労働制については、働き方改革関連法案からその適用範囲を拡大する内容が削除される方針が固まっている。そのため、裁量労働制については現行法の範囲内での適用となることから、企業が従業員の労働時間を把握するという今回の修正内容は、それに応じた措置という側面もある。なお、この修正で追加される企業の労働時間管理については労働基準法で定める時間管理と異なることから、罰則規定は盛り込まれていない。
労働時間を正確に管理することが長時間労働の是正につながるというのは短絡的な発想といえるかもしれない。ただし、こうした法律の改正という発想が生まれてきたのは時代の流れがそれを求めているからと考えることもできる。厚生労働省としても、罰則規定こそないものの、法律として明文化することで従業員の健康確保を目指しているという「目的」を明確にすることができる。働き方改革はまだ始まったばかり、様々なケースを想定し、都度修正していくことになるだろう。(編集担当:久保田雄城)