自民公明の与党は年収1075万円以上の専門職を労働時間規制対象から外し、成果で評価する「高度プロフェッショナル制度」を含む働き方改革関連法案の採決を31日の衆院本会議で行う構えだ。政府・自公は今国会での成立を目指している。一方、野党は長時間労働や過労死を助長するとして高度プロフェッショナル制度を削除するよう求めている。
立憲民主党や国民民主党など主要野党は「人の命や人生、社会への貢献などにかかわる重要な法案であり、与野党が納得感を持ち、国民の皆さんにも理解を得なければいけない」(立憲民主党・辻元清美国対委員長)。
「労働時間規制がなくなるため、働かせ放題になる。労働時間を記録する必要がなくなるため、仮に過労死などが起こったケースでも、労災の認定が極めて難しくなる」(玉木雄一郎国民党共同代表)と指摘。
「世論の一部には年収1075万円以上の人にしか当てはまらないという誤解があるが、法律のどこにも具体的な年収について書かれておらず、経済界がこの制度を議論していた時には年収400万円というケースも取り上げている」(同)と対象となる年収額が『法定』されているわけでなく、引き下げられる危険性があると訴えている。
また法案をめぐっては根拠となるデータに不適切なものが全体の2割に上り、その後も、衆院厚労委員会で強行採決された25日、その当日、同一の調査票を2重に集計していたものが6件あったとするなど、法案のもととなった資料の信ぴょう性も揺らぐ事態になっている。立憲など野党4党1会派は28日に衆院議長に対し、委員会に差し戻し議論するよう申し入れている。
一方、与党は29日の衆院本会議で法案を通過させ、参院に送る予定だったが、31日に先送りした。高度プロフェッショナル制度での年収対象について、日本経済団体連合会の榊原定征会長は「経団連から年収要件の引き下げを求めていくことはない」と記者会見で話しているが、担保されるものはなく、少なくとも、「対象とする年収額について」国会議論での採決を要する「法律改正」レベルでの明文規定が求められる。(編集担当:森高龍二)