IT専門調査会社IDC Japanの調査によると、国内IoT市場は2022年まで年間平均成長率14.9%で成長し、市場規模は12兆円に達する見通しだ。
IoT市場の成長については言わずもがなだが、注目すべきはその市場構成の推移だ。現時点で支出額が多いのは産業分野が中心で、組み込み機器や社会インフラの運用効率の向上を目的にした、組立製造やプロセス製造、官公庁、公共/公益、クロスインダストリーなどが上位を占めている。ところが、同社の予測によると、2021年頃からAmazon、Google、Appleといった外資系大手ベンダーが住宅内の家電製品や空調システムなどのスマートホーム関連向けに仕掛けるであろう新規サービスなどを背景に個人消費者のIoT支出額が急増するという。さらには農業分野や医療分野、小売りなどの分野でもIoT技術は大きな成長が見込まれている。
そんな中、各種メーカーが公開しているオープンプラットフォームへの関心が高まっている。以前は、ハードウェアやソフトウェア、サービスを提供するのに必要な仕様・技術などは秘匿性の高いもので、各メーカー固有のものであることが多かった。独自性を保持することで、いかに多くのユーザーを囲い込むことができるかが、メーカー共通の戦略だった。ところが、これに一石を投じたのがGoogleだ。同社は、スマホやタブレット向けのOS「Android」を開発の翌年に公開。その成功によって、オープンプラットフォームへの興味と可能性を一気に押し広げた。
そして、さらにその流れを加速させているのが、ArduinoやRaspberry Piなどのオープンソースの基板だ。これらの基板は、もともとは主に電子工作でのソフトウェアやハードウェア開発向けに一般販売されているものだが、電子工作向けといっても、その内容は最先端。ビジネス用途にも充分に耐え得るものだ。メーカーズの開発やIoT機器のプロトタイプ開発時において簡単に評価できる利点が大きく、産業分野での活用が活発化している。また、このようなオープンソースの基板は、発売しているメーカーによって性能や特色なども大きく異なる。前述のArduinoやRaspberry Piはあまりにも有名だが、その他にも、可愛らしいピンクの基盤が理系女子からも人気を集めそうな世界初のmbed対応ボード「GR-PEACH」や、GPS受信機能とハイレゾリューション・オーディオコーデックを搭載した、ソニーの「SPRESENSE」などが注目株だ。
とくにSPRESENSEは、豊富な計算能力と超低消費電力を両立させただけでなく、ソニーらしい、ハイスペックのハイレゾリューションオーディオ機能を搭載。その気になれば、SPRESENSEを使ってハイレゾプレイヤーを自作することだってできるのだ。また、9月5日には、電子部品企業のロームがSPRESENSEの拡張ボード2種を発売。センサ拡張ボードによって、加速度、地磁気、気圧といったセンサ機能を追加でき、BLE拡張ボードによって、Bluetooth LE 通信機能を追加することができるため、より高度なIoT 機器の評価・開発に活用できることになる。
そして、これらのオープンプラットフォームや周辺技術は、これからのシステム開発環境を大きく変える要素を秘めている。
例えば、ソフトエンジニアが資金をクラウドファンディングで募り、3Dプリンタで試作機を作れば、個人レベルでも最先端のハードウェアを開発することも可能。ものづくりの未来が大きく変わりそうだ。(編集担当:松田渡)