世界的に自動車各社がディーゼル搭載車離れのなか、その内燃機関にこだわる、マツダ

2018年09月15日 11:31

CX-5

マツダの内燃機関、なかでもクリーンディーゼルの資質の高さを世界に認めさせた立役者、初代「CX-5」、今度はそのディーゼルを使って48Vマイルドハイブリッド化する

 マツダはディーゼルエンジンと電動モーターを組み合わせるディーゼルハイブリッド車(DHV)の市場投入を決めた。2020年をメドに欧州と日本で発売する。独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正や環境規制強化でディーゼルエンジン搭載車から消費者が離れて行くなか、ディーゼルHVを投入することを決めたマツダ、果たして勝算はあるのか。

 世界ではディーゼル車への逆風が吹く。欧州ではVW不正前のピークだった2011年、EUにおける新車販売の56%をディーゼルエンジン搭載車が占めたが、2018年4-6月期には37%まで減少した。

 それを受けて欧州トヨタは欧州でディーゼル車販売から撤退する。日産自動車もディーゼルエンジンの開発を中止する見込みだ。マツダがディーゼルの開発を続けるのは、トルクフルな走りの良さや高い燃費性能、軽油のコストパフォーマンスなどを背景に、当面一定の需要があると判断したからだ。

 まず人気モデルのSUV「CX-5」にディーゼルHVを搭載し、SUVを中心に車種を順次採用車種を増やす。マツダは18年度中に提携関係にあるトヨタの協力を得てガソリンHVを投入する計画だが、ディーゼルHVは独自開発する。

 マツダが開発するHVシステムは、メルセデスやアウディなど欧州車で採用が拡大する簡易型の「マイルドハイブリッド」システムだ。低電圧の48V電源を用いる小型モーターが発進時などにエンジンをアシストする。このハイブリッドの採用で、世界最高水準の燃費性能とされる現在同社のディーゼル車よりも燃費性能を2割程度引き上げる。この48Vディーゼルハイブリッドは、メルセデスなども採用を拡大している方式だ。

 自動車やエネルギー、海運、防衛などの産業情報を得意とする国際調査会社IHSマークイットによると、2030年のディーゼル車の世界需要は2017年比で約40%減の1000万台程度と予測する。一方、欧州メーカーが注力するマイルドハイブリッド車は約50倍の3500万台に急拡大するという。グローバルに燃費やCO2排出規制がますます厳しくなる。が、高効率エンジンにEV本格普及までの「繋ぎ技術」とされるマイルドハイブリッドを組み合わせれば環境性能と動力性能を当面両立できる。

 米ゼネラル・モーターズ(GM)ですら不採算の欧州やインドから撤退するなど、トヨタグループやルノー日産アライアンス、VWグループなどを含めて、自動車メーカーは事業の選択と集中を進めなければ生き残れない。年間世界販売が160万台規模で、世界から見れば中堅以下ともいえるマツダにとっては急務だ。

 世界の潮流に逆行するかに見えるマツダの動きは、まさにその集中に見える。だたし、その集中には大きな「保険」があるから可能だともいえる。それは、2017年からのトヨタとの提携関係だ。電池やモーターなどへの開発投資が膨らむEVなどの分野ではトヨタの力を借りながら、マツダは内燃機関に注力する。トヨタとの役割分担を明確にし、トヨタが全方位で進める提携関係の中で埋没しないための戦略でもあるわけだ。

 あくまで、ガソリンエンジンを含めた内燃機関のブラッシュアップで勝負しようというマツダの決断。マツダが生き残るための覚悟の表れといえそうだ。見守りたい。(編集担当:吉田恒)