企業が談合やカルテルなどの疑いで調査を受けた場合に、弁護士とのやり取りを秘密にできる「秘匿特権」を公正取引委員会が認める方針を固めた。企業側としてはリスクを低減できるメリットがある一方で、公正取引委員会としてはこれを足掛かりに独占禁止法の改正に乗り出したい構えだ。
これまで公正取引委員会は企業の秘匿特権の導入に消極的だった。もし家宅捜索などで賞を押収しようとしても、企業が弁護士とのやり取りが記録されていると主張すれば秘匿特権で押収することができなくなり、本当に弁護士とのやり取りだと確認されれば変換されることになるからだ。公正取引委員会としては証拠隠滅のために悪用される可能性がある以上秘匿特権を認めることに後ろ向きにならざるを得なかった現状がある。しかし与党自民党や法曹界の要請によって秘匿特権を認める方針へと転換した。
秘匿特権が導入されれば、企業は弁護士との率直で円滑なコミュニケーションが可能となる。公正取引委員会が企業を調査しようとした場合、企業側の法務担当者が弁護士と対策を検討するが、現在の状況では対応策を検討したやり取りまでもが証拠化されてしまうため企業の萎縮を招いてきた。欧米に比べて不公平な状況が生まれていることに加え、日本企業の国際的な競争力にも深刻な影響を及ぼしかねない状態だ。企業側の防衛策の一環としても秘匿特権の導入は歓迎される可能性が高い。
しかし公正取引委員会としては秘匿特権で譲歩した分、独占禁止法の改正を加速させたい考えだ。改正独占禁止法では、企業が談合などを自主的に申告した場合に課徴金が減免される制度の見直しを柱として裁量型課徴金の導入が検討されている。悪質な談合やカルテルを行う企業に対しては厳しい処分を下す一方で自主申告には寛大な処分にとどめるという、アメとムチを使い分ける改正となりそうだ。秘匿特権と独禁法改正、今後も企業と公正取引委員会の駆け引きは続く。(編集担当:久保田雄城)