安倍晋三首相が10月15日の臨時閣議で2019年10月から実施する消費税率アップの事案について、「消費税率については法律で定められたとおり、2019年10月1日に現行の8%から10%に引き上げる予定だ。今回の引き上げ幅は2%だが、前回の3%引き上げの経験を生かし、あらゆる施策を総動員し、経済に影響をおよぼさないよう、全力で対応する。軽減税制を導入し、一般的な家庭の消費の4分の1を占める飲料・食料品については、消費税を8%のまま据え置く」と述べた、その内容に注目が集まっている。
加えて「自動車については、来年10月1日以降に購入する自動車にかかる税負担の軽減について検討を行ない、今年末までに結論を出していただけるよう、与党に審議をお願いする」とも発言した。
これは経済産業省で、2019年10月の消費税率引き上げによる自動車需要の減少対策をとして、引き上げと同時に廃止となる自動車取得税の代わりに導入予定の自動車の燃費課税を一時停止する案が浮上している件に触れたものだ。経産省は自動車に関連した税制の全体的な見直しを検討しているが、代替財源の確保など課題も極めて多い。
この燃費課税は、2016年度の税制改正で導入が決まった。前述のとおり消費増税の導入と同時に廃止される自動車取得税に代わって導入されるクルマの燃費環境性能に応じ、車両価格の1~3%を購入時に納める税金だ。それを2019年10月の消費増税から1年間ほど延期し、購入時の税負担を下げるという起案である。
麻生太郎財務相は食品などの軽減税制について疑問を示すも、「間違いなくきちんとした対応をしなければならない」と発言し、政府全体で消費税対策の検討が本格化しており、燃費課税について引き下げ幅などの議論が進みそうなのだ。
経産省はこれとは別に「自動車税」の大幅な引き下げも要望する。税制改正要望で、登録車の自動車税額の大幅引き下げを求める。登録車の税金を、現状の3分の1程度に引き下げるという案件だ。同時に経産省はエコカー減税などの延長や自動車重量税の上乗せ税額の廃止も求めている。日本自動車工業会も税制改正要望で同じ内容を求めている。
9月に会見で自工会の会長でトヨタ社長の豊田章男は、「日本の自動車ユーザーは
世界一高い税負担を強いられている」として、軽自動車税を基準にした抜本的な引き下げを求め、自動車の購入から保有、走行にいたるまで9種類もあるとされる複雑な税体系の見直しを求めた。
ただ、一時的な消費増税の反動減対策である燃費課税の延期に比べ、自動車の保有にかかる自動車税の抜本的な見直しには財務省と総務省は慎重だ。自動車取得税の規模が年間1600億円なのに対し、自動車税は1兆5000億円に達するためだ。
安倍首相は過去に、「リーマンショック級の経済危機が起きれば、消費増税の再度の先送りもあり得る」としていたが、来年の消費増税にともなう軽減税、自動車税ほか、さまざまな税について、年末にかけて議論が続くことになりそうだ。(編集担当:吉田恒)