パワハラに法整備検討 企業は及び腰

2018年11月16日 06:48

画・パワハラに法整備検討 企業は及び腰

厚生労働省はパワハラを法律で禁止するための検討を始めた。どこからがパワハラなのかという線引きや企業への指導の徹底も今後の課題となりそうだ

 「パワハラ」という言葉が認知されるようになってからすでに数年が経過した。それでもパワハラはなくならず、現在でもパワハラを理由に自己都合退職する会社員は後を絶たない。こうした事態を重く見て、厚生労働省はパワハラを法律で禁止するための検討を始めた。しかしその一方で企業は及び腰だ。

 そもそもパワハラとは、「職場において優位にあるものが、劣位にあるものに対して精神的・身体的苦痛を与える行為」と定義することができる。特に業務の適正な範囲を超えて行われる行為を指す。ただしひと口に「パワハラ」と言っても、その形態はいくつかに分類される。厚生労働省ではパワハラを6類型に分類している。身体的暴力や罵詈雑言を浴びせるなどは論外だが、「お前は必要ない」、「役立たず」といった人格否定の発言もパワハラとなる。さらに一人だけ業務の連絡事項を知らせない「人間関係の切り離し」、交際相手や体調などプライベートな事柄に過度に踏み込む「個の侵害」、明らかに過大な量の業務を押し付けたり、逆にまったく仕事を与えない「過大・過少な要求」などもパワハラだ。

 職場内でのハラスメントはいくつか存在し、セクシャルハラスメントやマタニティハラスメントは男女雇用機会均等法によって企業は防止策を講じることが義務付けられている。しかしパワハラに関しては適用される法律がないため、名誉棄損罪や暴行罪、傷害罪、脅迫罪などの刑法犯としての対応しかできないのが現状だ。厚生労働省は今後パワハラを法律で禁止するための検討を始め、法規制を行いたい考えだ。

 しかし企業の間ではパワハラの法規制に抵抗感が根強い。というのも、業務上必要な指導もパワハラとして訴えられる恐れがあるからだ。さらにどこまでをパワハラとして認定するのか、職場に監視カメラを設置しなければならないのか、企業が責任を負う部分があるのかなど企業の不安は尽きない。どこからがパワハラなのかという線引きはもちろんのこと、企業への指導の徹底も今後の課題となりそうだ。(編集担当:久保田雄城)