ホンダが英国撤退を決断し、スウィンドン工場閉鎖決定に踏み切った、その理由

2019年02月23日 12:34

Honda_CIVIC

ホンダの英国スウィンドン工場で生産し、北米などに輸出している主力生産車「CIVIC」、次期モデルは北米ならびに日本国内生産か?

 ホンダは欧州唯一の生産拠点である英国スウィンドン工場を2022年に閉鎖する方針を固めたと、2月19日に米テレビCNNや英・国営放送BBCが報じた。その後、日本経済新聞や全国紙、在京テレビ局をはじめとして大手マスコミが一斉に同様の速報を流した。

 たまらず、ホンダの八郷隆弘社長は、同日夕方になって東京・南青山のホンダ本社で会見を開く。そこで八郷社長は冒頭、「来期からの運営体制を決定すると共に、かねてより取り組んでいるグローバルでの四輪車生産体制の進化の一環として、欧州の四輪車生産体制の見直しを行うことにしました」と述べて、

 「英国の四輪車生産工場、Honda of the UK Manufacturing Ltd.(HUM)に関しては、現在、CIVIC HATCHBACK(シビックハッチバック)をグローバルに供給していますが、今後の、グローバルでの生産配置を検討した結果、次期モデルから北米など他地域で生産する方向で検討を進めることにいたしました」と英国生産から撤退することを正式に発表した。

 ただ、英国生産撤退について、「BREXIT(ブレグジット)とは関係ありません」と、何度も強調したのが印象的だった。

 同時に、こうした判断に基づき、「2021年中をもってHUMでの完成車生産を終了する方向で労使間での協議を開始し、また、トルコの四輪車生産工場であるHonda Turkiye A.S.も同様に2021年中に現行Civicセダンの生産を終了することにしました」とも述べた。

 この英国からの撤退というホンダの決定を受け、部品を納めるサプライヤーも英国内の生産拠点の閉鎖や他の販路開拓を迫られる。英国内に自動車工場を抱えるメーカーや関連部品会社は、英議会でEUとの離脱協定案を承認する見通しがたたず、方針が決められない状況に業を煮やしている。

 閉鎖する英南部のスウィンドン工場は2018年に主力車シビック(CIVIC)などを約16万台生産し、日本を含む世界へ輸出していた。しかし、この工場の生産能力は25万台/年で世界各地のホンダ工場のなかでも極めて稼働率が低い。しかも、欧州市場でのホンダ車の販売は年間10万台強とシェア1%程度で、ホンダの欧州四輪事業は赤字が続いていた。

 ホンダ欧州事業は長い間苦戦続きだ。また、ホンダの世界販売のうち欧州は3%に満たない。生産台数も低迷が続き、北米などへの輸出で工場の稼働率を維持してきたのが実情だ。ホンダのスウィンドン工場で生産しているクルマの5割以上が北米向け。シビックの次期モデルの生産拠点を決めるにあたり、八郷社長曰く「北米向けは北米でつくる」ことが最善と判断したという。

 ホンダの生産能力は世界で540万台。英国とトルコ工場の生産撤退が完了すると、生産能力は510万台に減る。一方、稼働率は100%超となり、収益力が向上するという。

 ホンダの英国撤退についてテリーザ・メイ英首相は「失望した」と述べている。しかしながら、自動車業界の一般的な見方では、工場稼働率が80%に達しないと採算ラインに乗らない。英サンダーランド工場で新型エクストレイルを生産するという約束を撤回した日産と同様、ホンダの英国撤退は、この2月に発効した日本とEUが結んだ経済連携協定による関税撤廃で、日本からEUへの輸出が可能になったことも後押ししているようだ。

 今後、ホンダのグローバルな生産体制は北米、中国、そして日本を核とする3極となり、電動化という進路に向けてステアリングを切る。(編集担当:吉田恒)