内閣府のシンクタンクである経済社会総合研究所で「幸福度研究」というものが行われていることをご存じだろうか。実証結果をみてみると「所得の上昇が人々の幸福度を改善するには限界がある」ことや「日本では年齢とともに幸福度が低下する」「結婚や配偶者の存在は幸福度を引き上げる」など、なかなか興味深い。
もちろん、幸せの尺度は人それぞれだ。ある人にとっては幸せに感じることでも、別の人にとってはそれほど幸せと感じないこともある。しかし、幸せを研究することは日本を豊かにすることに繋がるのではないだろうか。
実は、経済社会総合研究所のような公的な機関だけでなく、幸せに関する研究は民間企業でも注目され始めている。
例えば、住宅メーカー大手の積水ハウスは、2018年8月に企業として日本初となる「幸せ」を研究する「住生活研究所」を開所した。ここでは住宅の機能面の改善だけではなく「健康」や「家族のつながり」などの暮らしにおける「幸福感」を追求するテーマに取り組んでいるという。
同研究所では研究結果から、家族団らんの場所であるリビングの設計が「幸福感」を高める重要なポイントであると考え、先進技術によって実現した仕切りの少ない大空間リビングを中心とした「ファミリー スイート」という暮らし方提案を行っている。従来のLDKの発想にとらわれず、家族それぞれが思い思いに暮らせて、且つお互いの気配を感じながら心地よい距離感でつながることができる空間提案は顧客にも好評で、昨年10月からの同社の主力住宅商品 「イズ・ロイエ ファミリー スイート」の発売以来、約3割の顧客が「ファミリー スイート」を採用したという。
また同社では、この「ファミリー スイート」をさらに進化させ、大空間リビングに加えて広い軒下空間をリビングに取り込んだ新しい「ファミリー スイート」の提案を始めた。同社は実物大の空間で実験を行い、リビングのいごこちを研究。開口部を大きく取ることで自然とつながり、心地よいと感じる場所が広範囲に広がる効果を検証している。また、商品の拡充によって、鉄骨造・木造どちらの戸建商品でも「ファミリー スイート」の採用を可能にするなど、幅を広げている。
同社住生活研究所のアンケート結果によると、親と子のファミリー世帯が最も重視する時間は「家族のだんらん」で、一方で家族がリビングで一緒に過ごす時間は長いものの「一緒に居ながら、“それぞれ”ですることも少なくない」ことがわかっている。その結果、家族一緒のシーンに応えながら、それぞれの思い思いの行為も干渉されにくい「広さの確保」と、家族の気配・つながりを伝える「仕切りの排除」したリビングが大切だとしている。暮らしにおける「幸せ」の研究から生まれた「ファミリー スイート」は、家族のつながりを実感できることで、住まい手に一層の幸福感をもたらすことに繋がりそうだ。(編集担当:藤原伊織)