旭化成建材快適空間研究所は住宅の温熱性能と居住者の意識について調査を行った。住居内で熱中症とみられる症状を引き起こした事がある人は約1割。高齢世代になるほど救急搬送の割合が増える一方、室内での熱中症リスクへの認識は高い世代の方が薄い結果に。
近年の夏の暑さは深刻な問題となっている。我慢すれば良いレベルの気温を遥かに超えており、一歩間違えば身体的な症状を引き起こすほどの災害にまで発達した。炎天下の中で活動する人はもちろんのこと、家の中にいても熱中症対策を怠る事はできない状況にある。スポーツをする人や仕事で体を動かす人など、常日頃から熱中症にならないよう気を付けている人は多いだろう。しかしどれだけ自分で気を付けていても熱中症の症状と見られる吐き気や頭痛などを引き起こすケースは多々ある。注意していても防ぎきれない事もあるのが熱中症であるため、家の中にいれば安心だろうと言う油断は命取りにもなりかねない。
旭化成建材の快適空間研究所では首都大学東京建築学域須永研究室と共同で、住宅の温熱性能と居住者の意識に関する調査を行った。熱中症の発生場所とは意外にも住居内が多い。ここ2年から3年のうちに疑いも含めて自宅内で熱中症になった経験があるかとの問いに対して、10.7%の人があると答えていた。自宅内のどの場所で熱中症を引き起こしたかについては、寝室と居間や食堂が上位である事も発覚している。
ところがここで問題となるのが、熱中症を引き起こした経験や引き起こしかねない危険性に関して、全ての人がきちんと自覚できている訳ではないと言う点である。同調査で自宅内での熱中症を心配しているかアンケートを取ったところ、心配していると答えた人は20代で65.1%、60代になると38.0%という結果になった。熱中症の疑いで救急搬送される世代は高齢者が多い一方、年代が上がるにつれて熱中症リスクを正しく認識できる人が減っている。かつての時代では暑くても我慢する事が当たり前であった事も、熱中症対策に関して注意が疎かになってしまう原因の一つなのかもしれない。
住居内での熱中症対策は水分補給や冷房器具の使用なども効果的ではある。しかし住まいの温熱性能自体を高める事によって、寝室や居間での熱中症予防に繋がる事が今回の調査の結果分かっている。気温や湿度などの室内環境が健康状態を左右してしまうのが現代の夏である。住宅そのものの快適性を向上させる事によって、健康を守ることへの手助けとなるかもしれない。(編集担当:久保田雄城)